初! 作者名非公開イベント2016秋
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学校
酔歌
投稿時刻 : 2016.08.17 04:39 最終更新 : 2016.09.04 22:05
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更新履歴
- 2016/09/04 22:05:03
- 2016/08/17 04:40:49
- 2016/08/17 04:39:20
学校
酔歌


 寂れた教室の地面を踏みつけると、コンと寂しい音が響き渡る。もとたくさん机が並べられていたはずなのに、今は黒板が棒立ちしているだけ。こんな暗闇の中じあその黒板すらも分かりこない。電灯はとうの昔に切れた。

 ぶ壊れた本棚には、3冊くらいの本だけ残ている。みんな古い著作物だ。開くと、餓鬼共の殴り落書きが浮かび上がている。本文に興味なんてない。一部のページが腐て落ちる。脱脂粉乳をぶかけたあの日が巡る。

 窓を覗いた。

 「ずいぶんと高い服を着やがて」

 夕焼けがそうやて僕らを煽た。確かに僕らは偉くなた。自分で金を稼ぐことができるようになたし、家族だてできた。今の人生は最高だ。これ以上望む必要なんてない。

 教室を見渡して、自分が座ていた席の場所を思い返した。その席を見た途端「あーここだ」と思い出すことができた、何故か。

 座て黒板を眺めていると、当時のことを思い出す。先生に軽いいたずらをしただけで、母親を呼び出されて説教。誰かがおならをここうもんなら教室中の男子が爆笑する。時が経つに従て、少しずつだけれど大人になていく自分自身に戸惑たりもした。

 黒板の粉受けを見た。

 「あの時俺を折たガキが帰てきやがた。俺はまだまだ安物カルシウムの塊だよ」

 チクの破片が嘆く。こいつのようにずと子供でいたら、俺は今のようにはなることはできなかたんだろう。

 子供のころは楽しかた。確実に。バカみたいに笑て過ごしていれば一年あという間に終わる。だけど、大人になれない。

 大人になてから気付く。あんなにも楽しかた日々。もと楽しめたんじないか。もう一度、戻てみたいてずと思い続けている。だけど、それは許されないし実行だてできない。

 息を吹きかけて粉を吹き飛ばした。子供たちはどこかへ散る。チクに大人はいない。彼らは人間につくられるものだから。でも、僕らは違う。行動次第で上にも下にも行ける。人気者や犯罪者にだてなれるんだ。

 でも、いつもそこに留まることはできない。それが人間の運命だし、人間のいいところだと僕は思う。僕は人間だけれど。

 僕はドアを開け、廃れた廊下に出た。ここに未練はない。あんなに楽しい思い出をくれた上に、僕を成長させてくれた。「さようなら」と言て校門を出た。振り返て校旗を見上げた。

 僕は今がいい。今のままがいい。あの頃は楽しかたけれど、今の方がずと楽しくて素的な日々だ。にこり笑て歩いて帰た。あの時みたいに。
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