第34回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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わらうひと
投稿時刻 : 2016.08.21 14:44
字数 : 1000
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わらうひと
ゆみあ あゆみ


あるところに、美しいなだらかな海にかこまれて、ぽつりとうかぶ島がありました。そこには、家族のように身をよせあてくらす、ちいさな村があります。その村の人びとは、とてもふしぎなことに、あべこべなのです。何があべこべかと言うと、村びとたちは悲しいことがあたときには笑い、うれしいときに泣くのです。そういうわけですから、はじめてこの村をおとずれるたび人は、びくりしてしまうのでした。
 
どうして、こんなふしぎなことがあるのでしう。じつは、こんなおはなしがあるのです。
 
むかし、この島には、とてもうつくしいおひめさまがいました。たいへん、りぱなおひめさまで、いつもたみのことを考え、ぜいたくは決してしないで、とてもまずしいくらしをおくていました。たみがうえてしまわないよう、おしろのたべものをぜんぶ、くばてしまたのです。
 
あるとき、おひめさまは言いました。
 
「わたしは、王女。どんなつらいことでも、たえなければなりません」
 
おそう式があると、それがどんな夜遅くても、かならずその家に行て、おくやみを言い、またあるときは、たみのけこん式にもしせきしました。おひめさまの子どもがしんで、悲しみにくれているときでも、にこにこと笑てしくふくしました。そんなおひめさまのことを、たみはとてもしたていました。
 
ところが、そんなたみ思いのおひめさまは、くにをのとろうと、たくらんでいたひとたちによて、悪ものにされてしまいます。
 
「あくぎくひどうの女王」
 
そんなうわさが広まて、たみの中に、おひさまを悪くいう人が出てきてしまいます。それでも、おひめさまはおいわい事があると、たみの家に行て、やはりにこにこと笑うのでした。
 
このたみ思いのおひめさまを、いたい、だれが悪く言えるというのでしう。
 
おひめさまは、くにを立てなおそうと、けんめいにがんばりますが、たみの心はどんどんはなれていてしまい、ついに、おひめさまは捕らえられてしまいました。そして、おおぜいのたみの前で、しけいされることになた日。おひめさまははじめて、泣きました。いつも、自分の思う通りに気持ちをあらわせなかたおひめさまは、この日、はじめて本当の気持ちをあらわせたのでした。
 
このおはなしが、この村の人びとにとて、どういういみを持つのかは、わかりません。けれど、今日もまた、村の人たちは、悲しいときに笑い、楽しいときに泣くのでした。
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