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朝の情景コンペ
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朝なき朝を思え
 投稿時刻 : 2013.05.12 12:26
 字数 : 675
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朝なき朝を思え
司令@一字でも前へ


 夜は嫌いじない。
 皆が寝静まる中、自分ただ一人だけが活動していることを思うと、まるで世界を我が物にしたような感覚に酔う。

 しかし、私は睡眠というものを憎んでいる。
 一人の寝床は、毛布をいくら重ねても寒く、静寂を掻き消す冷蔵庫の重低音が煩わしい。
 どうにか意識を失おうと瞑目する。真の闇。いつまでも同じ景色で飽きる。耐えきれず眼をさまし、夢の世界から遠ざかる。
 やけに渇いてきた気がして、冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す。グラスに注いで、喉を鳴らして飲み下していく。
 また布団に潜り込み目をつむる。しばらくして再び目を開ける。もう一杯牛乳を飲む。そして布団の中に帰る。
 悪夢のような無限ループ。眠ることで覚めるとしても、意識の力ではどうにもならない。
 眠れ眠れと強く念じるほどに、意に反する結果になる。

 ちちち。そうこうしているうちに鳥の鳴き声が聞こえてきた。
 カーテンを開けて窓の外を見やれば、うすらと東の空が白んでいる。
 軽い絶望すら覚えたが、どうせ明日――いや、今日に予定などない。荒々しく布団をかぶて、強く瞼を閉じた。

 目を覚ます。
 どうやら眠れたのであろう。時計の針は進み、日はすでに高い。鳥の歌劇はすでに終わり、外を行き交う車が騒がしい。
 瞼は鉛のごとく重い。ねとりと脳裏にこびりついた夢の残滓。身体の節々が軋みをあげる。
 計算上、人が必要とするであろう睡眠時間には足りなかたが、これ以上寝ていたくはなかた。
 身を起こし、伸びをする。欠伸を噛み殺しつつ、近所のコンビニへ遅い朝飯を買いに向かた。

 朝は嫌いじない。
 だが、朝といえる朝に、私は長らく会ていなかた。
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