This is the beginning of a new day. Good Morning everyone.
黒が
灰に
灰は
白に
周囲の色は夜が明けるにつれて、色合いを変えていく。
だが、視界は一向に鮮明にならない。暗闇の代わりに霧がや
ってきたのだ。
森は深い霧の底に沈んでいた。
闇の中では時折、悲鳴のような鳴き声が聞こえるだけだったが、鳥達の目覚めの挨拶が聞こえるようになってきた。
だが、男たちの耳には賑やかな朝のやり取りも聞こえてはいなかった。
聞こえるのは己の鼓動と葉を踏みしめる乾いた音。
皆が一斉に立ち止まったかと思えばナイトビジョンゴーグルを取り外す。霧があるとはいえ目視でも充分な明るさだ。
男たちは一言も声を発しなかったが、鋭い目つきと簡単な手の動作で言葉を交わしていた。
彼等の姿は、森に溶け込んでいた。まるで人の形をした茂みが移動しているかのようだった。
思い思いの葉や苔、樹の枝で装飾したギリースーツと迷彩服。顔にも泥のようなものを塗り、ぎょろりとした白い目だけが不気味に輝いている。
手にはアサルトライフル。大方はパキスタン製の模造銃だが、手入れしやすく弾づまりも起こしにくいので使い勝手が良い。数名はスコープのついた狙撃銃を手にしている。
兵士、である。
確実に一歩一歩、だが素早く、白い霧の中を進んでいく。
露が滴り落ちてこようとも、決して動じる様子はなかった。彼らが鈍感というわけではない。ただ、集中しているのだ。
完全な隠密作戦で、奇襲攻撃であったから、敵と邂逅する可能性は低いのだが、それでも警戒を怠ろうとはしなかった。
村を出る前に吸った煙草には一種のナノマシンが含まれており、神系デバイスと共同して恐怖心等を退け、集中力を向上させる。だから、彼らの頭のなかには仕事のことしかない。
そして、彼らは仕事場にたどり着く。
隣村だ。
彼らは素早くアイコンタクトとサインを出して散会する。皆、隣村の地図は頭のなかに叩きこまれている。
文字通り、村の床屋に三次元画像データを埋め込まれたのだ。
皆、音もなく配置についた。
隣村の警備兵は各方角に二人ずつ、気の緩んだ顔をしている。夜襲には備えていた様子だが、夜が明けて安心しきっているのだろう。
さあ、一日の始まりだ。
おはよう。
皆さん。