てきすとぽい
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肉小説
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好き? 嫌い?
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2017.01.28 00:38
字数 : 1799
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好き? 嫌い?
茶屋
「僕の事嫌いなの?」
「そんなわけないでし
ょ
」
「だ
っ
たら何で食べないの?」
「何で
っ
てそり
ゃ
……
」
「や
っ
ぱり僕の事嫌いなんだ」
「それとこれとは話が別で
……
」
これは例えば近未来のお話。
例えばの近未来では最近恋人の肉を食べることが流行
っ
ている。
そり
ゃ
ま
ぁ
恐ろしい近未来ですね
っ
て話になるかもしれないけど、おどろおどろしい話
っ
てわけでもない。そり
ゃ
リアル
っ
てやつにこだわる連中は生きたままの恋人の肉を生で食べる
っ
てのもいるけどそれはあくまで少数派。鎮痛剤もなしでやるのはさらに少数派で大半が痛みもなしで流行の愛の儀式に励む。再生技術の発展のおかげで失
っ
た肉の再構築も対して高くつかないしどういうわけか保険だ
っ
てち
ゃ
んと利く。
でもま
ぁ
それはさ
っ
きも言
っ
た通りあくまで少数派
っ
てやつの話で大半は自分の細胞から培養した人工肉をおいしく調理して食卓で和気あいあいと食べる。味覚工学で保障された味はバ
ッ
チリでまずい
っ
て思う人間はほとんどいない。人工肉(もちろん人間以外の細胞からできたやつ)が主流の現代ではナチ
ュ
ラリスト以外に家畜肉を食う奴なんていない。値段も高いし人工肉より癖が強いからね。
そんな技術でできた恋人の(ち
ょ
っ
とお高めの)人工肉が不味いはずがない。
だけど私は。
「どういう風に話が別なのさ」
そうい
っ
た彼の目は少し潤んでいる。そんな目にいささか動揺していたけど私はそれだけでは妥協する気になれない。
「だ
っ
て、人の肉だよ?」
「僕の肉だよ?」
そう来たか。
「だけどさ」
「僕を食べたくないの?」
「いや、そういう言われ方されると語弊があるというか」
「じ
ゃ
あ何で」
「だ
っ
て不自然でし
ょ
」
そう不自然だ。人の肉を食べるのは不自然な気がするのだ。
「不自然じ
ゃ
ないよ? 共食いは自然界に存在するものだし、儀式的な食人や飢饉での食人は古来から記録に残
っ
ているよ」
「でも基本的に食人は避けられてきたわけでし
ょ
?」
「それは社会的な制約じ
ゃ
ない? 平常時に人の肉を食べるのは労働要員を減らしてしまうわけだし、労働要員として役に立たなくな
っ
た老人の肉はそもそもおいしくないだろうから。人の権利や道徳観が増すほど人肉食は避けられてきたかもね。でもこの肉は僕を殺さずして食べる肉だよ。あるいは病気。他の家畜より人の肉を食べた場合のほうが細菌やウイルスとかの感染症は感染する確率は高いだろうしね。それにプリオン病のせいで人肉食が淘汰された可能性だ
っ
て示唆されているね。でも、この肉は人工的に管理されているから大丈夫だよ。それとももしかしてナチ
ュ
ラリストなの?」
「違うよ。違うけどさ」
「何」
彼はいささかぶ
っ
きらぼうに言う。むす
っ
とした様子だ。むす
っ
として目が潤んだまま。少しすねた感じ。
「だ
っ
てさ。生きてる細胞からできたものだよ」
「爪や髪の毛だ
っ
て生きてる細胞からできたものだよ。それを後生大事に残しておくの? ゴミでし
ょ
。捨てるでし
ょ
」
「それは、だ
っ
て、死んだものだから。魂がないよ」
「魂なんてないよ。本当に生きてるものに魂がある
っ
ていうんなら僕らの細胞は一説には一日3000億個の魂のある細胞が死んでるよ。殺してるよ」
「それは自然だし」
「自然て何? 例えば君が食べ過ぎて太
っ
たとして、そしてダイエ
ッ
トをしたとする。そしたらその体重分、体重全部じ
ゃ
ないけど、余計な細胞が生まれて死ぬよ。それも不自然じ
ゃ
ない? そんな不自然な事をするのは人間にと
っ
て自然じ
ゃ
ない? それとも自然に幻想を見がちなナチ
ュ
ラリストなの?」
「だからナチ
ュ
ラリストじ
ゃ
ない
っ
て
……
っ
ていうかナチ
ュ
ラリストになんか恨みでも」
「別にないけど」
「ともかく
……
なんか嫌なんだよね」
「や
っ
ぱり僕の事嫌いなんだ
……
」
「だから違う
っ
て」
「じ
ゃ
あ、何で?」
「だ
っ
て
……
」
と言葉に詰ま
っ
た瞬間、彼はは
っ
としたように表情が変わ
っ
た。
「あ、もしかして、嫌いなの? ヒトの人工肉」
「そういえなくもないけど
……
」
そんな単純な話ではないのだ、と言いたいところだけれど余計話がこじれそうなので止める。
「好き嫌いなら仕方ないよね。僕が食べるよ」
そうい
っ
て私の目の前に置かれた皿を引き寄せる。そして「私」と「彼」を交互に食べ始めた。
「おいしいの?」
「うん。や
っ
ぱり君と僕の組み合わせは最高だよ」
そんな彼の言葉を奇妙に感じながら、彼がおいしそうに「私」を食べるのを眺める。
ま
ぁ
、確かにそんなに悪い眺めじ
ゃ
ないかもしれない。
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