更新履歴
- 2017/02/18 23:31:25
- 2017/02/18 23:30:21

“臨時ニュースをお伝えします”
　BGM代わりにつけていたラジオの音楽が途切れた｡
　作業の手を休めずに内容を聞き流していると､聞き覚えがある言葉が耳に飛び込んできた｡
「……自分の名前ではないか！」
“自分”は今､ヨーロッパの某国で事故に遭い現地の病院に運ばれたそうである……｡
　すぐにTVをつけてみた｡画面には数年前の自身の写真が映っていた。TVが報じるところによれば､自分は個人旅行でヨーロッパに行き､現地の観光ツアーに参加した｡一行を乗せたバスが後を走るトラックに衝突されてしまった｡後ろ側の席にいた自分は大ケガをし､意識不明の状態らしい｡
　自分は海外旅行にいった覚えはないし､現にここでいつものように作業をしているではないか！

　休憩時間になり､化粧室にいった｡手洗い場にある鏡を見て驚いた｡見ず知らずの顔が映っていた。
「……さん､……さんってば」
赤の他人の名前を呼ばれながら背後から肩をたたかれた｡
同僚の一人だった｡
「あの子､気の毒ね｡お金を貯めてやっと有給を取って初の海外旅行だったのにね」
“あの子”って自分のこと?!　今､ここにいる自分は一体何者なのだろう……。

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