第39回 てきすとぽい杯
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投稿時刻 : 2017.06.17 16:13
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小伏史央


 空のお星さまは、いつもきみを見守てくれているよ。
 お母さんがそう言ていた。
 それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは一生を終え、星になた。

 木星くんはいつも以上に落ち着きなく、赤いうずを回していた。いたいどうしたのだろう?
「どうしたの? 木星くん」
「いやね、地球くんが最近ぎらぎらしてるのが気に入らないのさ」
「ぎらぎら?」
 確かに地球くんは、最近体の周りがきらきらしているような気がする。
「地球くん、それなあに?」
「ああ、これ? これは最近流行りのスペースデブリさ。綺麗だろ?」
「そうだね」
 それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは星としての一生を終え、綺麗になた。

 綺麗になたぼくは空の下に帰てきた。
 そこにはたくさんのものを綺麗だと感じるたくさんの生き物がいた。
 かれらが「綺麗」だと感じると、ぼくの存在感は強また。
 そのうちかれらは滅んでしまた。ぼくは綺麗としての一生を終え、星になるつもりだた。
 でも星は滅んでいた。
 仕方がないのでぼくは存在感になた。

 宇宙の崩壊が始まていた。原子核くんが死んで、中性子くんが逃げ出していた。
 中性子くんは陽子くんになた。陽子くんは死んでしまた。
 ぼくは徐々に居場所をなくしていた。
 ぼくはなくしていた。になた。

 なくしていた。になたぼくはたくさんの居場所を得ることができた。
 なくしていた。が求められる場所はたくさんあたからだ。
 あまりにたくさんだたので、ぼくは分裂した。
 なくしていた。はたくさんある。になた。

 たくさんある。は素粒子になた。
 素粒子は今までずと一緒にいてくれた時間になた。
 時間は昔になた。
 昔であるぼくは、かつて存在感があた綺麗な星々になた。

 空のお星さまは、いつもきみを見守てくれているよ。
 シリコンでできた生き物が我が子に対してそう言ていた。
 ぼくは二人の生命体に見つめられて、かれらになりたいな、と思た。
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