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安眠文学
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ひまわり
 投稿時刻 : 2018.04.03 19:05
 字数 : 619
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ひまわり
浅黄幻影


 二人は眠りのなかにいて、母はこどもの夢を見る。我が子が笑顔で駆け寄て、小さくやわらかな手を伸ばして母を呼ぶ。
 ――おかあさん、おかあさん。
 その声に彼女はほころびる。太陽の下、草原の上を元気に走る躍動、まるで夏のひまわりのようなまぶしい笑顔。日射しの下で輝く姿を見て、母の心にもしあわせが訪れる。
 雲間に射した月明かりで彼女はふと目覚め、それから夢を思い出して腹部へ手を当てる。
 ――私が夢を見ているとき、この子も夢を見るかしら?
 こどもの夢がどんなものか、彼女は目を閉じて思い浮かべる。きと光のなかに、ふわふわと浮かんでいる夢だろう。そう、もしかしたら、私たちの夢を見ているのかも。
 けれど彼女はふと、気づく。そこに映る自分の姿には、顔は描かれない。父の顔も浮かんでこない。
 ――そうか、あなたはまだ何も知らないんだね。
 彼女は少し寂しく思う。窓から射し込んでいた光はいささか陰る。
 この世界を何も知らない子。いたいどんな夢を見るのだろう? 本当に光のなか? もしかしたら闇のなかに夢を見ている? それでも我が子に安らかな眠りを与えたい。私たちの大切なこどもだから。いたい他の誰がこの子を守るというの?
 自分のなかに育つ命があたたかい夢に守られて、大きくなて、いつか元気にひまわりのように目覚め、花咲いて欲しい。日射しに負けないほど輝く、力強いひまわりのように……
 母はいつしか、取り戻された月明かりの下に眠ていく。
 しあわせな夢を二つ、身体に宿して。
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