安眠文学
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まぶたのうら
投稿時刻 : 2018.03.26 00:11
字数 : 467
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まぶたのうら
小伏史央


 左に大きな丸い靄。右には小粒の砂が散る。
 それらが次第につながて、ひとつの波打つ浜になり、まぶたのうらを横切た。
 私は眠ている。
 音を立てずに波がさざめく。寝息に合わせて上下に揺れる。
 息を吸うときは手前に満ちて、息を吐くときは引いていく。
 手前に寄りすぎて、ふちが見えなくなることもある。見えなくなると暗くなる。
 まぶたのうらに何も見えなくなる。
 そして再び波が引き、薄暗いスクリーンが映し出されるのだ。
「、  」
 幾度かの波の往来を見た後、目が覚めた。目を開けただけのようでもあた。
 カーテンを閉め切ただけでは日の光を遮るには不十分で、明暗が混ざり合い部屋に靄を生み出している。ざらざらとした砂粒のような光が無数に散らばていて、布団から出られなかた。
 数日休んだ程度では起き上がれなかた。スマホの電源はおとといから切ていた。もう何も考えたくなかた。
 眠気は収まらず、まぶたのうらと同じ部屋の景色が、揺りかごのように揺れている。そのまま再び眠りに落ちた。
 左に大きな丸い靄。右には小粒の砂が散る。
 寝ても覚めても、見るのはまぶたのうらばかり。
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