第5回 てきすとぽい杯〈平日開催〉
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宅配物
ウツミ
投稿時刻 : 2013.05.17 23:35 最終更新 : 2013.05.18 00:42
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- 2013/05/18 00:42:33
- 2013/05/17 23:36:46
- 2013/05/17 23:35:23
宅配物
ウツミ


「お届けものです」
 呼び鈴に応えてアパートのドアを開けると、そこにはダンボール箱を抱えた配達業者が立ていた。
「あ、ここにハンコお願いします」
「は……
 とりあえず、言われた通りにポンとハンコを押して荷物を受け取る。
「ども、ありがとございました
 なんとも気の抜けたような調子でドアを閉めて立ち去ろうとする配達業者。
「あ、そうそう」
 が、ドアが閉まる直前、彼は思い出したように振り返り、言た。
「もしも私が詐欺師なら、あなたは今頃地獄の淵ですよ?」
……
 僅かなドアの隙間からこちらを覗きこむ配達業者。
 なぜか真顔。さきまでのテキトーな調子はどこに行たのかと思うほど真面目な声。
 そして呆然とする僕の目の前で、最後まで目と目を合わせたまま、彼はガチンと扉を閉めた。
 あとに残されたのは、僕と受け取たダンボール箱だけ。
「え……
 ――え、今の何? どゆこと?
 回らない頭で考えるが、考えても分からないものはやぱり分からない。
 念のため外を確認して見るが、あらかたの予想通り配達業者はもはや見る影もない。
「は……何だたんだろ、あれ」
 仕方が無いので、とりあえず受け取たダンボール箱を観察する。
 まず目に入るのは、上面にデカデカと書かれた『絶対に開けるな!!』という文字。
 しかもご丁寧に、下に小さく『いいか、絶対だぞ! 絶対だからな!』と書かれている。
「え……
 そんな物送てこないでよ、と思う。
 とりあえず受け取た時はそこまで重くはなかた。重過ぎず、軽くなく。
「差出人は……と」
 見てみると、『差出人: 今あなたのうしろにいるの 様』となていた。
 とりあえず脊髄反射で後ろ回し蹴り。洗濯機にクリーンヒト。痛い。
 玄関に置いておいても仕方が無いので、痛みが治まるのを待てひとまず部屋に運び込む。
 しがない学生の一人暮らしでは、主な部屋はこの狭い六畳一間だけ。
 そしてこのダンボール箱、そこそこデカい。正直邪魔である。
「ささと開封したいんだけど……
 しかしながら『開けるな!!』である。
 ――いや、待て。開けるなと言うからにはそれなりに理由がある筈だ。
 もう一度ダンボール箱を仔細に観察してみる。
 配達用の注意書きシールを発見。よくある『割れ物注意!』とかいうアレだ。
 内容。『爆発物注意!』。ふざけるな。
 そしてその横に、『←半分冗談です(はと)』という但し書き。半分本気じか。
 ――さあ……。このダンボール箱、どうする……!?
 明らかに過剰な危険物アピールからはすごくイヤな予感が溢れんばかりに漂う。
 しかしながら、開けないまま部屋に置いておくのも激しく邪魔である。
 出来ればそとゴミ捨て場に並べてあげたいが、腐ても自分宛ての荷物。大事な物だたら大変だ。
 せめて中身を見てから判断したいところだが、判断した時には手遅れという可能性もある。
 ――どうする……! どうしたらいい……!?
 汗の滴が頬を伝い落ち、心臓は早鐘を打ち、喉はゴクリと鳴る。
 そこでハと気付く。
 ――しま! 爆発物の場合、時限式て可能性も!?
 さあ、考える時間さえ奪われてしまた。一刻も早く決断しなければならない。
 このダンボール箱を開けるか、そと部屋に置いておくか、ゴミ捨て場に投棄するか……
「よし、見切!! このあからさまな危険物アピール、フイクだな!?」
 ――そうだ、僕に危害を加えたいなら危険物アピールをする必要はない! これはハタリだ!!
 僕は勢いよくダンボール箱の蓋をとめるガムテープを掴み……引き千切
 ……何も起こらない。よし
 ――……。やはりこの注意書きはそれ自体が罠だたんだな……
 勝た! その確信が僕の胸を埋める。
 そして、僕はダンボールの箱を……開けた。
 中に入ていたのはシルストレミングの缶詰。
 発酵食品。飛行機への持ち込み不可。通称・匂い爆弾。
 僕は全力でブン投げた。
 窓枠に当たた。
 破裂した。
 近隣住民が泣き出すほどの匂いが部屋に染み付いた。
 僕はアパートの大家に追い出されるほど怒られた。
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