第46回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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映画「あなたは回る」予告編
投稿時刻 : 2018.08.18 19:29
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映画「あなたは回る」予告編
小伏史央


  げてきて、気付けば見知らぬ街にいた。霧の立ち込めた道路の脇に、古い民家が立ち並んでいる。
 肩で息をしながら、足元の感覚を思い出す。裸足だた。がむしらに走てきたから、いつ脱げたのかも分からなかた。
「あんさん、そんなに息切らせてどうしたんだい」
 背後から老人の声がする。飛び上がて距離をとり、それからようやく振り返たが、そこには唖然とした顔のお爺さんがいるだけだた。
「大丈夫かい」
「あ、ええ。すみません。取り乱して」
「なにかあたのかい」
「ここまで走てきて……あの、追われて」
「何から」
「何て、あ、あれ?」
 思い出せない。確かに何かを見たはずなのに、ここの霧に包まれたかのように、記憶が形を失ていく。
「なんだい、靴を履いてないじないか」
「脱げちたみたいで」
「孫のお古で良ければ、譲てやろうかい。うち来るといい」
 お言葉に甘え、老人の家にお邪魔する。上がり框に腰かけ、濡れたタオルで足の裏を拭た。ぼつぼつと小石を踏んだところが血で滲んでいるように見えたが、本当に小さな傷だたようで、砂を拭き取ると傷も元からなかたかのように綺麗になた。
「あたあた。これだよ」
「すみません。こんなに親切にしてもらて」
 孫のお古だというそのサンダルは、履くまでもなく自分のものより大きいと分かた。しかしないよりはずとマシだ。ありがたく受け取て、礼を言う。
「疲れただろう。お茶でも飲んでいきなさい」
「そんな、そこまでは」
「いやいや、飲んでいきなさい」
 居間に案内される。おせかいな人だが、サンダルを譲てもらた引け目もあるので、再度甘えることにした。そこにはブラウン管テレビが置かれていて、今はコマールを流しているところだた。
〈映画「あなたは回る」近日公開
 ――あなたはこの映画が始まる日まで、この予告編から逃げられない〉
 足が止まる。思い出した。これを見たのだ。
 焦燥感がふつふつと湧き上がる。老人を窺うとヤカンのお湯を沸かしていた。振り返て、そのまま玄関へと進む。
「なんだ、帰るのかい。ゆくりしていきええのに」
 呼び止められる。彼への挨拶はそこそこにサンダルを履き、玄関を飛び出した。貰たそれはやはり大きく、ぱかぱかと音を立ててかかとが跳ねた。それでも走る。走る。走る。霧に包まれた道を、無我夢中で走た。
 霧が揺れる。複数の足音が響いた。振り向かずに走り抜けた。ずと、ずと。
 逃
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