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第48回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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ぼくたち三角関係
 投稿時刻 : 2018.12.15 23:29
 字数 : 2002
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ぼくたち三角関係
永坂暖日


「私は思うのです。カネルお嬢様が身に付けていらる肌着は、きと、お嬢様のお心のように汚れなき真白なものである、と」
 うとりとした目でどこでもない場所を見つめ、熱ぽい溜息を吐く。
「ああ、私に透視能力が備わていれば、と願わずにはいられない……! そうすれば、お嬢様のお召し物のその下のお姿を拝見できるのに、私には何故、その力がないのか――
 そして、己の非力を嘆くように、がくりとうなだれ、崩れ落ちる。
……俺はさきから、何を聞かされているんだ?」
 ソフに座ているサタスは、自分の足元で嘆いている彼に、呆れ混じりの冷たい視線を向けていた。
「私に透視能力を搭載するべき、とお父上に進言してください」
……うまい具合にカネルの服の下を透視できる機能か?」
「さすがは、天才ロボト工芸士の自慢のご子息にして私のよきライバル。私の望みをよくお分かりですね」
「おまえがさきから俺に聞かせてただろうが!」
 足元からサタスを見上げる彼は、褒めているようで少しもサタスを褒めていない。
 しうもない欲望を最後まで聞いてしまた自分を褒めてやりたい、とサタスは思た。
「でも、サタスも私と同じ欲望を抱いているでしう。透視能力がなくとも、それくらい、知ていますよ?」
 さきまで、この世のすべてを嘆くような表情で這いつくばていたくせに、ゆらりと立ち上がて、したり顔でサタスを見下ろした。
「透視能力の有無は関係ないだろ、それ……
 一方のサタスは、ぐたりと肘置きにもたれかかる。
 親父はどうして、こんなしち面倒くさいロボトなんぞ作たのだ。
 いや、本当は知ている。発注主であるカネルの父親の要望だたのだ。人間味あふれる、娘のよき友人となるようなロボトを、と。
 カネルの父親の要望はもともだたと、サタスは思う。
 この火星に人類が入植してまだ間もない。火星人口は本当に少なく、入植後の第一世代は十数人。オリンポス山のふもとに建設されたドームには、サタスとカネルの二人しかいない。カネルの父親の要望は、サタスのためでもあたのだ。
 サタスの父親は、地球時代でも有名なロボト工芸士だ。その腕を買われ、火星にやて来た。労働をになう様々なロボトを設計し、要望に応じて、入植者たちの心を慰めてくれるロボトも作た。そのうちの一体が、しうもない欲望を爆発させている友人ロボト、その名もロボだ(サタスの父が命名。残念ながらネーミングセンスはない)。
 ロボは、サタスたちが幼い頃から姿形は変わらない。しかし、思考や情緒の成長はサタスたちに合わせたのだそうだ。そのせいなのか、人間味の解釈が悪かたのか、ロボは、カネルに恋心を抱き、その下着姿を想像するというおかしな成長を遂げていた。その上、サタスを何かとライバル視する。カネルはお嬢様と呼んで上げ膳据え膳、猫かぶているくせに、サタスと二人の時だとこうだ。呼び捨てにするのは、カネルの前でも同じだが(曰く、カネルはロボの発注主の娘だから。そこは、まあ、納得はできる)。
「いいからささとお父上にお願いしてくださいよ」
「言い方が急に雑になたな、おい」
「ライバルは強い方が、サタスも燃えるでしう?」
「いや、俺はおまえと張り合てないし。それに、おまえの持ち主はカネルの父親で、その父親に無断で機能追加できるわけないだろ」
「だから、サタスに頼んでいるのが分からないんですか? がかりですね、君のおつむには」
 小馬鹿にした顔で、はと笑う。
 どう考えても、親父は人間味の解釈の仕方を間違えている。サタスは殺意にも似た感情を抱いた。
「カネルとカネルの親父に、サタスがこんなことを言てた、と忠告してくる」
「そんな、ひどい! ライバルだと思ていたのに!」
「だから俺はおまえをライバルとは――
「サタスには血も涙もないんですか! 鬼! 悪魔!」
 立ち上がたサタスに、ロボが全力でタクルしてきた。不意打ちにサタスは対応できず、ソフに背中から倒れ込む。ロボも一緒に倒れ込んできたので、一瞬、息が詰また。
「私のこの気持ちを、どうして分かてくれないんですか!」
 タクルした時の体勢のまま、ロボが叫ぶ。
 と同時に、部屋のドアが、ノクもなく開いていた。
 サタスとロボは、同時にドアの方を見る。ドアノブを握たまま、目を丸くして固まているのは、カネルだた。
……ごめん、邪魔するつもりは……あの、気にせず続けて」
 彼女は慌てふためいた様子でそう言うと、サタスたちの言葉を待たず、パタンとドアを閉めた。
 続けてて、どういうことだ。
「これは……お嬢様に、とんでもない誤解をされてしまたようですね?」
「おまえのせいだろ……
 この状況を見てロボのあのセリフを聞いて、果たして、カネルの誤解は解けるのだろうか。
 サタスは重い溜息を吐いて、とりあえず、いつまでものしかかているロボを、腹の上から突き落とした。
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