3月うさぎの「スイーツ感想」お茶会
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夢見るスイーツ
投稿時刻 : 2019.03.23 02:06
字数 : 1699
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夢見るスイーツ
はづき葉優


スイーツを食べる人々

 ここは、とあるちいさな街の通り。今日もたくさんの人達が歩いていきます。難しい顔をしたおじさん。ぼんやりと考え事をしている制服のお姉さん。泣きそうな顔で下ばかり見て歩く男の子。いつもの見慣れた街の風景です。
 ですが、いつもと違うのは、ほら。見てください。
 ボリボリ。
 さきまで難しそうな顔をして歩いていたおじさんが、ポケトから真新しいお菓子の箱を取り出して、チコレートでコーングされた長い棒みたいなのを食べています。
 すると、どうでしう。
 瞬く間に、おじさんの顔はぽわん。すごく楽しそうな顔に変わています。ちと立ち止まて、まるでバドを振るかのような仕草。
 あ、こちらも見てください。
 ぼんやりとポーチから取り出したちいさな袋菓子を、ひとお姉さんがぱく
 ぽわん。
 とても幸せそうな顔で、うふふふて笑いながらスキプ。
 ここはちいさな街の通り。スイーツを頬張りながら、人々が過ぎていきます。


不思議なスイー

 おじさんもお姉さんも男の子も。みんな楽しくて幸せな表情をして今日も通り過ぎていきます。
 この街のスイーツは、とても大人気で、食べるといろいろな夢が現実になるというのです。噂を聞きつけた隣街の人達も、連日この通りに並ぶたくさんのスイーツ店に足を運んでいます。
 スイーツにはいろいろ種類があります。さきほどの難しい顔をしていたおじさんが取り出したボリボリの棒。お姉さんがひと口に入れたモフモフのひし形。ほかにも、ガリガリだたり、シワシワだたり、いろいろあります。
 ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。シワシワ。
 実は、スイーツによて、見られる夢が違うのです。ボリボリは、さわやかな夢。ほら、さきほどのおじさんは食べた途端、楽しそうにバドを振る仕草をしていました。あれはきと、少年の頃に打ち込んでいた少年野球の思い出が見えているのでしう。
 モフモフなスイーツを食べたお姉さんは、心の奥がじんわりと暖かくなる夢を見たのでしう。もしかすると、初恋の人を思い出して、思わずスキプしてしまたのかもしれません。
 俯いて泣きそうな顔で歩いていた男の子は、シワシワなスイーツをたくさん、頬張ていました。さて、どんな夢を見たのでしう。


スイーツの夢

 スイーツを食べた人々は、みんな楽しくて嬉しくて幸せな気分になります。けれど、夢は長くは続かないのです。食べ終わてしまうと、あという間にいつもの風景が目に飛び込んできてしまうのですから、せかく幸せな夢を見ていたのに、すぐに悲しい顔をしてしまいます。
 だから、スイーツの夢を見たくて、人々はすぐ近くのスイーツのお店に入て、新しいスイーツを買てしまうのでした。
 本当にいい笑顔で、ボールを見送たおじさんは、本当に泣きそうな顔で走り出してしまいました。まるで、隣に誰かがいるかのように、頭を傾けていたお姉さんも、怖い顔でお店に飛び込んでいきます。
 お店の人は、さあ大変。
 そうやて、一刻も早く夢を見たい人々に急かされて、一生懸命、スイーツを売てはお金を受け取て、おつりを渡しています。そうして、人々はスイーツを頬張りながら、ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。幸せそうな表情で、また街を歩き出していくのです。
 そこに、涙を流して、もう歩けなくなた男の子がうずくまていても、誰も気にとめることはありませんでした。
 ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。
 人々が今日も、この通りを歩いて行きます。


スイーツを食べる人々

 みんなが見たい夢を見る。ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。
 そうやて、この街は一日を終えます。
 いえ。
 家に帰ても、ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。
 みんなの見たい夢がそこにあて、いつでも幸せで楽しそうで嬉しそうです。だから、悲しいことも怖いこともなにも起きません。だて、みんながひとりひとり。幸せなのですから。
 けれど、その夢はほんのひととき。いつかは覚める夢。永遠に夢の世界で生きることはできないのです。それでも、人々は夢を求めて、明日もあの通りを歩くのです。
 あなたも、一粒いかがですか。ボリボリ。モフモフ。ガリガリ。
 
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