第50回 てきすとぽい杯
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センチメンタル0時5分
投稿時刻 : 2019.04.13 22:57
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センチメンタル0時5分
浅黄幻影


 何度目の春が来ただろう。ぼくにとては異国情緒が未だに感じられるこの国のこの街、この丘の上のホテルで、ずときみをまている。日は落ち、いや……もうすでに深夜になてしまた。ぼくは今日もずと待ていた。明日もずと待ているだろう。
 ホテルの中央庭園には、いつも何かしらの花が植えてある。ポピーやスノーホワイト、バラは夏から秋にかけて、冬にはツリーと雪だるま、花になた雪の結晶が並ぶ。
 あのとき、ぼくたちはホテルで開かれた結婚式に参加していた。タキシードとウエデングドレスの二人が段の上で永遠の愛を誓い、指輪の交換と口づけをした。ぼくらは微笑んで彼らを見守た。それから白いブーケが投げられて、きみが受け取た。
「次は私たちの番!」
 と、きみはよろこんでいた。
 けれど、どこからか二人の旅はそれぞれ別の方を向いてしまい、すれ違てしまた。
 この国の夜はとても静かだ。お行儀のよい人たちがそろて寝静まていて、こんな時間に寝る気もないのは時間に追われている人か、ぼくくらいだろう。
 けれどぼくは今でも、春になるとこのホテルにやてきてしまう。あの日、きみが忘れていたぼくたちの愛を取りに来やしないか、ずと気になている。この季節、毎日のように結婚式をしているけれど、ぼくはブーケが投げられる度に、その先にきみがいるんじないかと目を見張てしまう。
 二人の忘れ物を、ぼくはまだ見つけられない。そして……きみはきと取りに来ない。
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