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第52回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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彼女の独身者によって裸にされた花嫁、さえも
 投稿時刻 : 2019.08.18 18:34
 字数 : 1000
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彼女の独身者によって裸にされた花嫁、さえも
ポキシオーネSVX ver.L


 心臓が車のエンジンみたいにボコボコと律動している。送り出された血液は全身を巡り、外部の刺激を受けて変質すると再び体の中心へと戻てくる。薄汚れた血の色は二酸化炭素が原因だと幼い頃から勘違いをしていた。いまなら本当のことが分かる。女の血液は男たちの視線や欲望を受けて変質するのだ。肺は血液を浄化せず心臓は最初から情欲が自分のものであたかのように錯覚させる。脈打つ感情はわたしの秘められた欲望。男たちの嗅覚を狂わすフロモン。わたしはきと、男たちと同じように欲情している。
 わたしの欲望を見つけて欲しい。本当の心を知て欲しい。着飾た服を脱がせて裸にして欲しい。こんな薄汚れた感情を持てしまたわたしを許して欲しい。花嫁になる準備はいつだて出来ていた。心も体も掠め取て欲しいのに、わたしの唇を奪う男たちはいまだ現れない。花嫁衣装が分断する男と女の距離は想像以上に遠く、水平線の彼方まで離れていた。

 ある日、司祭から給仕係まで様々な男たちが一斉に夜空を見上げ、女という銀河に心を奪われた。彼らは持て余した感情を吐露すべく様々な手段でその感情を合理化した。欲望の正体を探ろうと生まれた心をハサミで切断しグラインダーで粉々に砕いて漉し器に通した。最後に残た輝く結晶こそが純粋な自分の欲望で正義であると男たちは納得したがた。男たちは実に愚かだた。理解できるほど矮小化された心に価値などないと気づけなかた。理解など必要がないのに、自分の状況や立場なんて意味がないのに。拡大鏡で探さなきいらない程度の欲望は、当然、重力に勝てるはずもなく、空の途中で燃え尽き散た。
 わたしの唇を奪う男たちはいまだ現れない。

 結局、わたしは誰からも触れられないまま、花嫁として100年近く存在し続けていた。薄汚れた欲望を透明なガラスであらわにされたまま、永遠の処女としてここにいる。男たちも無駄で実現の可能性がない欲望の成就を相変わらず願たままだ。象徴的ではあるが変化がない無意味な存在として、わたしたちはただここにいる。意味を持て作られたはずのわたしたちはいつしか意味を失ていた。
 たくさんの目撃者がフラデルフアを訪れる。わたしたちの滑稽な姿になんらかの意味を求めようと、裸のわたしと愚かな男たちを網膜に焼き付ける。
 我が父マルセル・デンは天国でなにを思うだろう? あなたが未完で終わらせた作品を望む人々に。
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