てきすとぽい
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第一回てきすと恋大賞
〔 作品1 〕
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…
〔
6
〕
あべこべ☆シンフォニー
(
わんた
)
投稿時刻 : 2013.05.24 22:52
字数 : 5494
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あべこべ☆シンフォニー
わんた
Ⅰ
-
Allegro
brillante
エスカレー
ター
っ
て、好き。特にお買い物から帰るとき。
学校で男の子の中でも一番背が高いコウくんと、目線が近くなるもん。
「けー
っ
き
ょ
く何も買わなか
っ
たよな。佳奈が春物ほしい
っ
て言うから来たのにさ
ぁ
」
「ふふー
ん、いいんだよ。一緒に見て回るのが楽しいんだから」
「
……
女のそういうとこ
っ
て、わ
っ
かんねー
」
日曜にはよく、このデパー
トに来る。お気に入りのブランドもあるし、カワイイ服が多いから見てるだけでうきうきしち
ゃ
う。雑貨屋さんでアクセを付けて「似合う?」なんて振り返
っ
たときの、コウくんのびみ
ょ
ー
な顔もカワイイの!
だいたい男の子
っ
てさー
、デー
トになると見栄張
っ
ち
ゃ
っ
て、いろいろお金使おうとするんだもん。あたしに気を使
っ
てくれるのは嬉しいんだけど、学生なんだからお金ないに決ま
っ
てるもんね。こうや
っ
てブラブラしてればお金も使わないし、安心してずー
っ
と一緒にいられる。たまにお茶おご
っ
てくれるだけで幸せだよ?
「ヒー
ル、まだ慣れてないんじ
ゃ
ねー
の?
無理しち
ゃ
っ
て
……
」
「いいの
っ
。この方が近くでお話できるでし
ょ
」
チビだから、この前ハイヒー
ルを買
っ
てみたの。子供
っ
ぽいあたしに似合うのがなかなか見つからなか
っ
たけど、コウくんに「これ、いいんじ
ゃ
ない?」
っ
て言
っ
てもらえたから即決。でも帰
っ
たら、それに合わせる服をあれでもない、これでもないなんて引
っ
くり返したり。それも一緒に見て欲しか
っ
たけど、まだ家族に会わせるのは恥ずかしいもんね
~
。
「はいはい、佳奈の好きなエスカレー
ター
だぞ。も
っ
と近くなるんだろ?」
「
……
うん!」
コウくんが先に乗
っ
て、あたしはその後ろ。右側は走る人もいるから、左の手すりを持
っ
た。コウくんの頭がゆ
っ
くり下が
っ
て、あたしの目の前になる。ハイヒー
ルを買う前は、それでもこ
っ
ちが低か
っ
たのよね。
目の前の髪の毛をいじ
っ
てみる。
「なんだよー
、セ
ッ
トが乱れるだろー
?」
「いー
から、いー
から」
諦めて、為すがままに任せてくれた。エスカレー
ター
でもないと、こんなこと出来ないもんね。
「あ。白髪は
っ
けー
ん!」
「えー
。マジー
?」
思わずニヤけち
ゃ
う。ほんとは悩んで決めた白いワンピも近くで見て欲しか
っ
たけど、今は髪を触
っ
てるのがなんだか楽しい。それに、男の子の匂いがするな
ぁ
なんて、ち
ょ
っ
と胸がトキメいたり。
「あ
っ
!?」
急に足がガク
ッ
として視界が落ちる。
すぐコウくんが振り返
っ
た。
「佳奈!!」
ヒー
ル折れたのかな。
転んじ
ゃ
うのかな。
あたしドジだし。
このまま下まで落ちち
ゃ
うのかな。
「ほら!!」
「あ
っ
……
」
コウくんに、初めてぎ
ゅ
っ
て抱きしめられて。顔が目の前にあ
っ
て。
唇がものすごく近くに見えて。抱えてくれる腕が逞しく
っ
て。
「み、みんな見てるよ
ぉ
」
急に時間の止ま
っ
た世界の中心で、スポ
ッ
トライトを浴びてワルツを踊るように、そのままゆ
っ
くり、ふわあ
っ
て世界が回
っ
て、コウくんの横に着地した。
「ま
っ
たく
……
気を付けろよー
?」
「
…………
」
ドキドキが止まらなく
っ
て。
下の階へ着いたのに歩けなくな
っ
ち
ゃ
っ
て。
身体は離れたけど、腕は絡ま
っ
たままで。
「コウくん
…………
好き」
あたしのエスカレー
ター
は、どんどん昇
っ
てしま
っ
て。
「みんな、聞いてるぞ
~
?」
追い抜かす人に除けられ、腕をほどいて、コウくんは顔を背けた。
Ⅱ
-
Waltz
tranquillo
浩司に彼女が出来たらしい。私がず
っ
と狙
っ
てたのに。
あの日、放課後勇気を出して映画に誘
っ
たのに「ゴメン、日曜は用事あるから」
っ
て断られた。友達から、”あの子”とアヤシイらしいよ
っ
て聞いたのはその後。
このままじ
ゃ
気が済まない。なによ、あの女。チビのくせに。私の方がお似合いに決ま
っ
てる。浩司に相応しいのは、この私よ。
日曜はデー
トと踏んで、彼の家から跡をつける。通販で買
っ
た、スー
パー
ロングのウ
ィ
ッ
グで変装。普段シ
ョ
ー
トヘアだから、ち
ょ
っ
と顔を隠せば多分バレないと思う。彼と同じ切符を買
っ
て、同じ駅で降りて、街中を歩いて行く。若者向けデパー
トの前には”あの子”が待
っ
ていた。そのまま連れ立
っ
て中へ吸い込まれる。
近いのよ。イライラするわ。浩司とそんなに引
っ
付いて歩かないで。
まだ手を繋いだり、腕を組む仲じ
ゃ
ないみたいだけど、二人の衣が擦れる音がここまで聴こえてきそうだわ!
エスカレー
ター
を何階も昇
っ
て、ブテ
ィ
ッ
クや雑貨屋を歩き回る。いろんな服を身体に当てて「ね
ぇ
、可愛い?」
っ
て彼に見せる顔が憎らしい。彼のそ
っ
ちを見る瞳が悔しい。見るんならこ
っ
ちを見てよ。私を見て。私の方があなたに似合うわ。そんな風に”あの子”を見つめないで!!
「けー
っ
き
ょ
く何も買わなか
っ
たよな。佳奈が春物ほしい
っ
て言うから来たのにさ
ぁ
」
「ふふー
ん、いいんだよ。一緒に見て回るのが楽しいんだから」
「
……
女のそういうとこ
っ
て、わ
っ
かんねー
」
や
っ
と帰るのね