てきすとぽい
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第一回てきすと恋大賞
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〔 作品6 〕
ずっとあなたを
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2013.06.02 14:16
字数 : 1699
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ずっとあなたを
茶屋
ず
っ
とあなたのことを見ていました。
あなたのことだけを。
暑い日も。
寒い日も。
風の吹く日も。
雨の降る日も。
初めてあなたに会
っ
た日のことは今でも覚えています。
私はまだほんの小さな子供で、落ち着きのない子供で、なかなか一つのことに集中できないような、せわしない子供でした。
だから、子供の頃の記憶というものが余りありません。常に興味対象が移り変わ
っ
て、一つのものをゆ
っ
くり記憶する時間はあまりなか
っ
たようです。
それでもあなたと出会
っ
た日のことは今でも覚えています。
私は母に連れられて、買い物に行
っ
たのだと思います。
晴れ渡
っ
た青空は眩しいほどに鮮やかで、道端に生える草木は生き生きとした青色でした。
心地よい美風が吹き、時折強い風が起こるとタンポポの綿毛が舞い上がり、私は母に静止されながらもそれを追いかけようとしていました。
ふわふわと浮かぶ、柔らかく、白く淡い、あてどもなくさまよう、気まぐれな綿。今思えばち
ょ
うどその頃の私にとても良く似ていたような気もします。
空を漂う綿毛を目で追
っ
ていると、額に冷たい何かがついたのに気が付きました。
いつの間にか空は曇り、湿気を含んだ風が吹き始め、雨だ、と気付いた時にはすでに当りは土砂降りにな
っ
ていました。
傘など持
っ
ていなか
っ
た私達親子は、途方に暮れて、シ
ャ
ッ
ター
を下ろした店の軒先で雨宿りをするはめになりました。
しばらくするとそこへ、同じような親子が私たちの雨宿りする軒先にや
っ
てきたのです。
そうです。
あなたが来たのです。
あなたを見た瞬間、私の中で今まで味わ
っ
たこともないような、奇妙な感覚を覚えました。
思えば、それが初恋だ
っ
たのでし
ょ
う。
濡れてじめじめした感触も、曇天の下の憂鬱な感情も一瞬で吹き飛んでしまうような感覚でした。
心臓の鼓動が早くなる上に、それが嫌に大きく感じられて、自分は何かの病気にな
っ
てしま
っ
たのではなかろうかと疑うほどでした。
けれど、その感覚は決して不快ではなく、むしろ甘美なものでした。
それがあなたとの最初の出会い。
そして、最初の別れ。
あなたの名前も知らなか
っ
たけれど、あなたのことはそれからず
っ
と考えて来ました。
二度目の出会いは確か小学校。
一年生だ
っ
たか、三年生だ
っ
たか。ともかく低学年の時に、あなたは転校して来ました。
一目見ただけで、あなただとわかりました。
最初に出会
っ
た時とは、少し変わ
っ
ていたけれど。
や
っ
ぱりあなたはあなたでしたね。
それから数年間、あなたと同じ時間、同じ場所を共有しました。
何故か、今とな
っ
ては不思議ですが、あなたへの想いをず
っ
と胸の奥へ秘めて。
でも、別れは突然や
っ
て来ました。
最後の最後でや
っ
と想いを伝えられた私にあなたは戸惑いながらも笑
っ
て「ありがとう」とい
っ
てくれましたね。
三度目の出会いは、高校の頃だ
っ
たでし
ょ
うか。
クラス替えで隣の席に来たあなた。
授業中に眠い目をこすりながら、横を見た瞬間、あなたがいることに気が付きました。
何故、それまで気づかなか
っ
たのか不思議なくらい、あなたはあなたでした。
私の目を見て微笑み返してくれたあなたの笑顔は、間違いなくあなたでした。
今度は前のような失敗は犯しませんでした。
放課後の教室で。
紅色の夕暮れに包まれた教室で。
黒く浮かび上が
っ
た影絵の教室で。
私はあなたに告げました。
好きだと。
でも、あなたは曖昧な返事しかくれず、誤魔化されました。
けれども、卒業式前日の帰り道、あなたは言
っ
てくれました。好きだと。けれども、友だちのままで居たか
っ
たとも。
結局、私たちはまた別れました。
離れ離れになりました。
でも、またいつか、どこかで、出会えると信じて。
私たちは幾度も出会い、幾度も別れました。
幾つもの場面で。
幾つもの姿をしたあなたと。
あなたは子供だ
っ
たり、大人だ
っ
たり、年上だ
っ
たり、年下だ
っ
たり。
男だ
っ
たり、女だ
っ
たり。
色んな姿で、私の前に現れては、去
っ
て行きました。
そして、私たちは結婚し、子供も授かりましたね。
でも、今私の隣にはあなたはいません。
私の隣にいる人はただの配偶者で、あなたではありません。
あなたはどこへ行
っ
てしま
っ
たのでし
ょ
うか?
もう、私達が出会うことはないのでし
ょ
うか。
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