第54回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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たべばたたべばたかえかえかえたべばた
投稿時刻 : 2019.12.14 22:47 最終更新 : 2019.12.14 23:45
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- 2019/12/14 23:45:32
- 2019/12/14 22:50:28
- 2019/12/14 22:47:51
未来はよこい!
犬子蓮木


 料理はパラメータだ。
 甘味・苦味・塩味・酸味・旨味。
 道具が進化した結果、どの味をどれだけあげて、どのような食感の材質にまとめるか、どんな匂いとし、どんな色にするか、それらのパラメータをいじるだけが料理となた。
 PCの中で数字をいじり、それらしい形にまとめれば、あとはプリンタが出力してくれる。
 見た目も匂いも素晴らしいおおしい料理が出てくるので、メーカーで新商品の開発をしている私はいつも白衣の下の体をふくらませていたものだ。
 去年までは。
 今のわたしはすかり痩せてしまた。
 白衣もふくらまずしと伸びている。
 もちろん病気になたわけではない。加齢からの体の痛みや重さなどは感じているが、この仕事で暴飲暴食をしているわりに大きく健康を崩すようなことはなかた。
 ではどうしてかと言えば、作る方だけでなく食べて味を確かめるほうまでコンピタになたのだ。
 今では1秒間に1000パターンの料理が発明され、仮想空間で味見され、規定に満たないものが破棄され続けている。
 そんな厳しい世界を勝ち抜いた料理だけが味見の対象として出力されるわけなので、もう昔みたいに太るようなことはない。お昼ご飯の予定に組み込むことすらできないぐらいだた。
 わたしの仕事は味見ではなく、味見するコンピタの調整となた。人種や文化、体型、性別、環境、そしてそのときの気分、人間はいろいろな要員によて二つと無い人間として生きている。ならば、二つとない人間、つまりは個人に適応した料理が究極の料理というものだろう。
 個人がなにかを食べたいとお店にやてきて、これが今のベストですよと料理を出力して渡す。
 そんな理想的な流れを作るための出力装置はもう存在している。
 あとは誰に何を出すか。
 それを決めることさえできればいい。
 そんな理想はわかるけれど、それは無理じないのかと思いながら、よくわからない仕事を続けているのが今のわたしというわけだ。
 さまざまな思いつきで味見する機械を作り変え、無数の料理に対してどのように感じるかのデータを集める。そうして、注文をしてきた客の状態に近いデータを元に料理を出したりとしているが、どうも反応がかんばしくない。
 現在は試験店で、大勢の人間向けに作た最大公約数的料理と個人向け料理をランダムに出すというA/Bテストをしているが、前者の方が人気が高いというデータになている。前者のものも厳しい試験をパスしてベストだと出された解なので、それなりに人気があるのは当然なのだけど、しかし個人向けはそれを乗り越えてくれなければ困るのだ。
 個人のデータというものが足りないのではないかという気がする。
 そちらはわたしの仕事とは違う部署がやているのだが、こちらが想定しているものはもとパーソナルで、ちと来店したというレベルで集めるのはむずかしいものを対象としている。このズレについては上司に進言したことがあるが、上司としてはそれは想定済みで、もと将来を考えて、個人がデータをそれぞれの端末に日々記録し、そこから家庭で出力する時代を見越しているとのことだた。
 そう言われるとたしかにそちらの方がすごいと思うので、それを見越してコンピタの調整を進めるしかない。
 問題はそうすると現段階の成果があがらないため、わたしの評価もあがらず、ボーナスも伸び悩むということなのだが。
 プログラムに命じた試験が終わた。
 結局、予想通りを超えるようなものは出ていない。
 当然だ。こちらは未来を見越して、現代では成果とならないものをただ黙々と積み上げているだけなのだから。
 時計を見上げる。
 もうこんな時間か。
 別に必要なかたのだけど、なにかおもしろい結果はでないかと無駄に残業してしまた。
 小腹が空いたな。
 ちとカプラーメンでも食べてから帰ろう。                       <了>
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