同じ味 1: たべるところ
最初は喜んでくれた手料理も、さすがに毎回同じ味では飽きがきたらしい。
「今日も美味しいよ」
彼は優しくそういうけれど、実感がこも
った言い方ではないのはすぐわかった。ただ形だけ褒めてくれているだけだ。
そうやっていつものように口に出して褒めてくれるところは、とても好きだけれど、でもそうやって気を遣わせてしまっていることがもどかしい。
「やっぱり飽きたよね」
「え、そんなことないよ」
「いつも同じ味だし」
「同じ味だからいいんだよ」
「栄養だって偏っちゃうよ」
彼は困った顔でうーんと唸る。
「本当のことを言うとね、きみの手料理だけを食べて生きているわけではないんだ。ぼくにだって私生活がある。足りない栄養は自分で補っているよ」
「私の料理は食べなくても大丈夫ってこと?」
「ちがうちがう。だから、きみは気にせずいつも同じ味を出してくれればそれでいいんだ。そしたら僕は安心できるし、嬉しいなって思う」
彼はどこまでも優しくそういって、私の手料理をたいらげた。