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- 2020/02/15 23:37:20
- 2020/02/15 23:35:27
- 2020/02/15 23:28:05
- 2020/02/15 23:24:14

　
　世界で一番僕のことを知っていると豪語してはばからない、そんな強気な彼女との特別でありふれた恋愛が最後を迎えた瞬間は、小高い丘の上の公園で、海を見渡せるベンチから夜の港町のイルミネーションをひそやかに眺めながら過ごした。
　僕たちは、別れ話を具体的に煮詰めながら、次第に無口になり、ただただ観覧車の電飾が、時計の秒針のように回っていくのを、くるりくるりと目で追っていた。
　
　疲れた笑顔の微妙な表情で、彼女は声もなく拒絶を語った。
　苦笑いで頷きそれに応えた僕は、それでも彼女との思い出を色々記憶から探ろうとした。
　でもそれは、山陰本線の流れる車窓の風景のように結局うまく留まれず、もう二度と後戻りしてすくい上げることは出来ないんだということに気づく。
　
――多分、きっと、本当に、色々なことがありすぎたのだ。
　
　髪をなびかせて桃のシャンプーの香りが夜気に漂い。振り向いた彼女の漆黒に潤んだ瞳が僕をしっかり見つめた。
　数瞬の間を置いて彼女の唇が微かに震え、声を出そうとしたときに、僕は再びそして頑なに頷き、押し留めた。
　
――もう何を言っても始まらないことだった。
　
　そう、僕は考える。
　どんな言葉をかけてこの状況を慰めたりしても、そこからはもう、何一つ始まりはしないことなんだ。
　二人が目指さなきゃいけないのは、これから先にあるもののため。
　それをきちんと手にするためにも、優しさはこの状況に注ぐべきじゃない。
　
――大丈夫。僕らは正しく愛し合っていた。
　ただ、その対象をシフトすべき機会が、唐突に訪れただけなんだ。
　
　彼女が首を振りつつついたため息は、僕の決意に対してではなく、ただ柔らかながら冷徹に撫で付けてくる冬の夜風を振りほどこうとしたかのようだった。
　
――どうして、こうなったんだろう？
　そう口にしようとして、僕はやめた。
　
　夜景の光あふれる輝きの中で、観覧車の電飾は変わらぬ刻みで時を失い続ける。
　僕らもただそんな具合に、その後も行き場のない短い問いかけを、柔らかな冬の夜風の中で、ただただ呟くでもなく、宙に放棄し、納得という利己主義へのアリバイ成立を待ちわびているだけなんだろう。
　
　観覧車の電飾によるカウントダウンが、いずれ諦めにたどり着くまで。

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