てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第13回 文藝マガジン文戯杯「結晶」
〔
1
〕
…
〔
7
〕
〔
8
〕
«
〔 作品9 〕
»
〔
10
〕
〔
11
〕
…
〔
13
〕
偽ダイヤ
(
higuchinomama
)
投稿時刻 : 2020.11.12 17:05
字数 : 783
〔集計対象外〕
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票
偽ダイヤ
higuchinomama
俺は、ある宝石商を紹介された。
ホテルのラウンジでその宝石商と商談をした。
宝石商はテー
ブルの上にハリバー
トンのアタ
ッ
シ
ェ
ケー
スを開いて、宝石を並べていた。
俺は、伊達にブロー
カー
をや
っ
ていない。
ひと目で人造ダイヤとわかるものばかりだ
っ
た。
あきれかえ
っ
て言
っ
た。
「あんたさ、たしかに人造ダイヤも工業用に使えるけど、値段はつかないぜ」
すると宝石商は言
っ
た。
「あらら。よくわかりましたね。私は宝石なんて結晶に価値を見出していませんから。だから、こんなあこぎな商売をやれるんですよ」
俺はおもしろい男だと思
っ
た。
「ま
ぁ
、俺もダイヤなんて価値を見出していない。産業用には役に立たない。これがゴー
ルドなら産業用に使える」
「私も自分の資産では一切、宝石はありません。ゴー
ルド、銀、プラチナはオルタナテ
ィ
ブ資産としても
っ
ています」
「ま
ぁ
、それが普通だよな。宝飾用ダイヤなんて趣味が悪い。資産としては価値がない」
「そのとおりですね、旦那」
「ところでなんで、そんなものを俺に見せてきた?」
「いえ、人造ダイヤを見抜け方とビジネスはできませんから、失礼ながら私からのテストでした」
「あんたも悪い奴だな」
「ま
ぁ
、世の中には宝飾用としてもカスみたいなダイヤに価値を見出すバカもいますから」
「言えてるな。そういうのにはどうする?」
「カスしかわからない方とは取引をしません」
男はそう言うと、テー
ブルの下から、新しいアタ
ッ
シ
ェ
ケー
スを出してきた。
人造ダイヤのあ
っ
たアタ
ッ
シ
ェ
ケー
スを閉じて、下に置き、新しいアタ
ッ
シ
ェ
ケー
スを開いた。
今度は見事なものだ
っ
た。
たしかに宝飾用としても値段がついて当然の石で、加工も見事なものだ
っ
た。
「旦那なら、これ以上の説明は不要ですな」
「アタ
ッ
シ
ェ
ケー
スまるごとでいくらだ?アタ
ッ
シ
ェ
ケー
スごと買うよ。俺なら全部さばける。もちろん、手元になんておかないがな。売り抜けるだけだ」
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票