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第60回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・白〉
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パンデミックへの局地的勝利~この勝利は未来への一歩たり得るか?~
 投稿時刻 : 2020.12.12 23:16
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パンデミックへの局地的勝利~この勝利は未来への一歩たり得るか?~
バルバルサン


 一昔前、コンピターウイルスに感染しないために、マスクをしてパソコンに触る高齢者がいたという。
 それは笑い話のはずだた。コンピターウイルスが人間に感染などあるわけがない。
 そう、笑い話のはずだたのだ。
 いつからだろうか、それが笑い話にならなくなてしまたのは。
 20XX年のある時点から、人間に感染するコンピターウイルスが確認された。
 このウイルスに感染した端末の画面を見ると、そのウイルスに人間が感染してしまう。
 感染した人間の脳内で、ウイルスは人格を消去し、二つの欲求のみに生まれ変わらせる。
 食欲と、色欲のみの獣に。
 世界中が混乱に陥た。情報端末を触らない人間なんて、それこそ赤ん坊しかいないような世の中だ。だれしもに感染のリスクがある。
 そのコンピターウイルス、ビーストウイルスによて、人間の社会は崩壊への道を歩んでいた。
 


 俺の名前は西原東郷。三年前まではプログラマーをやていた。
 俺の作るプロテクトプログラムはどんなコンピターウイルスも寄せ付けない完ぺきなものだと自負していた。実際、その道では結構有名だたと思う。
 だが、あの忌々しいコンピターウイルス、ビーストウイルスによて職を失てしまた。
 パソコンや携帯といた情報端末を使う事、即ちビーストウイルスに感染するリスクが伴うようになたこの世界で、プログラマーの居場所などなかた。
 まあ、職を失うことくらいどうてことない。かつてプログラマーをやていた人間にとて、命があること、いや、人間であることが幸運なのだから。
 あのウイルスによて多くの人間が獣になてしまた。特に、パソコンや携帯などを扱う人間は、パンデミクの初期に感染しているため、こうして人間でいる元プログラマーの俺は、本当に運がよかた。いや、俺の作たプロテクトプログラムが良かたというべきか。
 とにかく、画像を扱う端末がほとんど使いようがなくなたことと、多くの人間が獣になてしまたため、人間社会は崩壊への道を歩んでいる。
 獣にならずに済んだ人間も、食料や水を奪い、争ている。人間が助け合えるのは、余裕があるときだけだという事を嫌というほど痛感したよ。
 だが、何とか理性を保た人間もいる。そういた人間が、車などで作たバリケードの中にあるコロニーに俺は所属している。
 俺はコロニーの中で、パソコンに向かいプログラムを組んでいる。
 このパソコンは部品から組み立てたもので、ウイルスに感染する可能性がないよう、外部から完全にシトアウトされている。
 俺が作ているのは、ドラクプログラムと呼んでいるもの。病気には、それに合た薬を投与しなければならない。この、ビーストウイルス感染症も、病気なら薬が作れるはずだ。そう願い、俺は三年の時間をかけてようやく、ドラクプロクラムのひな型というべきものを完成させた。
 これのプログラムを人間の脳に投与できれば、獣となり、今もコロニーの外で暴れる人たちを正気に戻せるかもしれない。
 だが、ここで問題が生じた。このプログラムを、そもそもどうやて脳に投与するのだ。
 まず、QRコードのような画像にして見せる方法はどうだろうと、試してみた。
 コロニー外から一人、獣人間をとらえてきて、画像を見せてみると。何とか正気のようなものを取り戻してくれた。
 かなり記憶混濁が激しいが、一応の成功だろう。とはいえ、世界中に蔓延しているのだ。いちいち画像を見せていてはきりがなく、現実的ではないだろう。
 どうすればいい?と、皆で知恵を振り絞り、一人がこんな意見を言た。

「このプログラムを、霧状にして散布できればいいんだけどな……

 なるほど、確かに、霧状にして、吸いこんで取り込めば楽だろう。だが、情報をどうやて霧にするのだ。
 すると、別の人が思いついた。

「このプログラムを、遺伝子操作かなんかで、ウイルスの遺伝情報と置き換えて、人間に感染するウイルスとしてばらまけばどうかな」

 面白い意見だ。確かに、人間に感染し、人間の体内に遺伝情報を打ち込むウイルスにこのプログラムをいれ込めれば、もしかしたら。
 だが、俺はプログラマーだが生物学はさぱりだし、このコロニーに学者の人はいない。しばらく悩み、ふと思いついた。
 そうだ、学者といえば大学だ。どこかの大学に、ここと同じくコロニーを作ている場所があるかもしれないと。
 一番近くの大学までは少し距離があるが、背に腹は代えられない。貴重なガソリンと、まだ動かせる車で、獣となた人たちを突破し、なんとか付近の大学の前まで到着した。
 道中の景色は地獄そのものだた。だから、一刻も早く、プログラムを投与しなければ。
 大学前には、バリケードがあり、どうやらコロニーができていると、一緒に来た人と喜び、何とか内部に入た。
 その大学で生き残ていた大学の先生たちに俺のプログラムを説明し、この事態の打開策を説明した。
 先生たちは最初、難色を示した。なにせ、プログラムをウイルスの遺伝情報に入れるのだ。難しく、また前例がない。失敗どころか、できるかどうかもわからないのだ。
 だが、こうやて生き残ていても、状況は打破できないとやてくれることになた。
 先生たちが生物学的なことをやてくれているうちに、他の人たちで霧を発生させる装置を組み立てることになた。
 これが無ければ、せかくウイルスができても、獣となた人たちに投与できない。
 時間はかかた。1年。とても辛く、果てしない時間だたように思う。
 だが、装置と、ドラク・プログラムウイルスは完成した。これを高いビルの上に設置し、ばらまけば……
 俺を含めた決死隊が、その任務に就いた。そして、ビルの屋上、装置を作動させた!
他のいくつかのビルでも、同じく決死隊が装置を置き、作動させたようだ。都市部に、霧が充満する。
 しばらくした後、俺たちはビルを降りた。そこでは、今まで何をしていたのかわかていない人たちが、きろきろとしたり、困惑した様子だた。
 俺たちは、やたんだ! と、コロニーの人たちと抱き合て喜んだ。
 そう、俺たちは、コンピターウイルスに、勝たんだ!


 日が昇ろうとする時間帯、都市部を霧が覆う。
 獣となた人間へと、薬となるウイルスを含んだ霧が覆う。
 この勝利は、局地的なものだ。まだ、世界中で獣となた人間が暴れている。
 だが、確かに一歩、勝利したのだ。
 これから、一度崩壊した世界でどんな未来が始まるのか。
 それとも、この局地的勝利で、終わてしまうのか。
 それを知る者は、誰もいない……
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