てきすとぽい
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第65回 てきすとぽい杯
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大きな地震のあった日の話
(
すずはら なずな
)
投稿時刻 : 2021.10.16 23:57
字数 : 1152
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大きな地震のあった日の話
すずはら なずな
大きなおなかを抱えて 年末の引
っ
越しは大変だ
っ
た。
第一子誕生とその成長ぶりなど色々な思い出の詰ま
っ
た2DKのハイツだ
っ
たけれど、次の子の産まれる前に もう少し広いところに引
っ
越したいと言い出したのは私だ
っ
た。
思
っ
た以上に段ボー
ルに詰める荷物は多く、思
っ
た以上にダンナは手伝わず、もうすぐ9
ヶ
月にもなる突き出たお腹をさすり腰をさすりながらも 準備を進めた。
引
っ
越しは12月25日。クリスマス。何故その日にな
っ
たのかは覚えていない、不動産屋と引
っ
越し屋の都合だ
っ
たかもしれない。
正月は段ボー
ルの片付いた新居です
っ
きりした顔で迎えたい。
26日からは荷物を出し、所定の場所に入れ、段ボー
ルをたたんで とりあえずは目につかないところに片付けてい
っ
た。食器棚には食器が、箪笥には衣類、押し入れには布団。長女のおもち
ゃ
は散らか
っ
てもすぐに片づけられるように、収納を考えた。
無事 正月を迎えたのは 良か
っ
た。それは本当に良か
っ
たのだ。
忘れもしない1月17日。
どおんと突き上げるような揺れの後、ゆさゆさと横揺れ。
それは体験したことのないような 地震だ
っ
た。TVでは延々火災の模様が映し出されている。
狭い家ながら「自分の部屋」もできたんだし、外国映画の子供みたいに 親の寝室と別に「自分のベ
ッ
ド」で寝かせたいなんて思
っ
ていた矢先だ
っ
たが、子供は子供でまだまだ親と一緒に寝たが
っ
ている。
引
っ
越し後は毎日母娘バトルで、あ
っ
ちで寝なさい、まだ寝ないもん、この本読みおわ
っ
たら 自分のベ
ッ
ドで寝てよね、(寝たふりして後で起き出してドラマが観たいというのもあ
っ
た。大人が寝るには早い時間だ)、とか言いながら結局自分も朝まで寝ち
ゃ
っ
たりする。
話を17日の朝の、それこそ危機一髪な話に戻す。
そんなわけもあり、その日も相変わらずのバトルとオトナの目論見とをよそに、眠気に負けた妊婦と子供は、一つのふとんで ひ
っ
ついて寝ていたのだ。
だけど、それが良か
っ
たのかもしれない。
色んなものが倒れる音がした。硝子の割れる音もした。真
っ
暗の中で吊り下げた電気の紐が大きく揺れ続けた。箪笥の上のものが勢いよく飛んで、落ちて来た。咄嗟にお腹と子供を抱え込んで布団をかぶ
っ
た。少した
っ
てようやく落ち着いて、スリ
ッ
パを探して おそるおそる階下に降りる。
食器棚崩壊。ダイニングテー
ブルに引
っ
掛か
っ
て倒れき
っ
てはいないものの、ガラス戸が開いたまま割れて、中の食器は粉々に散乱。つい数日前に全部段ボー
ルから出して、拭いて、並べたやつだ。
再び 欠片に姿を変えてまた 段ボー
ルへと還る 食器たち。
子供が、お腹が、そして出張先から戻り、かなりの距離を徒歩で帰
っ
たダンナも無事で良か
っ
た。
子供と別々に寝てなくて良か
っ
た、と「子供部屋」の飾り棚から落ちたものや、ずれて動いたチ
ェ
ストを眺めて思
っ
たのだ
っ
た。
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