てきすとぽい
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推敲バトル The First <前編>
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男・倫太郎、義理堅く
(
伝説の企画屋しゃん
)
投稿時刻 : 2013.06.08 23:30
字数 : 1724
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男・倫太郎、義理堅く
伝説の企画屋しゃん
ひやとい倫太郎がそのことに気づいたのは、スー
パー
から帰
っ
て来た時のことだ
っ
た。
エコバ
ッ
グに詰め込んだ、大量のハムや食パンや20個入りの餃子パ
ッ
クをキ
ッ
チンのテー
ブルに並べている途中で、コンセントをどうしようと思
っ
たのだ。
4月最初のその日、スー
パー
では3万円以上の買い物をした客へのサー
ビスに福引き抽選会を行
っ
ていた。
日頃は野菜や大豆パ
ッ
クを買う程度の倫太郎だ
っ
たが、生まれてはじめてカー
トを転がしながら、二
ヶ
月分の食料と雑貨品を買い込んだ。
福引き抽選会の一等賞は、木星旅行だ。民間人の宇宙旅行がニ
ュ
ー
スになる昨今でも、さすがに木星はない。実現すれば、き
っ
と北海道の星と呼ばれることだろう。倫太郎はスー
パー
の入り口で手にした買い物カゴを戻し、カー
トの取
っ
手をき
ゅ
っ
と握り締めた。
そして1時間以上もかけて買い物をし、レジで30,
546円の会計を済ませると、駐車場に設置されたブー
スに駆け込んだ。
ブー
スには、「日頃の感謝を込めて! エイプリルフー
ル大福引き抽選会」という垂れ幕がかか
っ
ている。
にこやかな笑顔の店員に引換券を渡し、倫太郎はガラガラを勢いよく回した。
ぽろりと出てきた玉は、まばゆい金色だ。ユー
コという名札の店員が、オー
バー
な動作でハンドベルを鳴らす。まるで50メー
トル先のライバル店に聞かせているような、派手で盛大な音だ
っ
た。
ところが、である。
店員にあおられて万歳三唱をし、意気揚々と自宅に戻
っ
てきたのはいいが、切実な問題が一つある。
冷蔵庫だ。
店員の
ユー
コは、「詳細は後日パンフレ
ッ
トを送るので、楽しみにしてて下さい
~
」と、何故か舌を出しながら言
っ
ていたが、いずれにせよ木星である。
伊豆の温泉へ行くのとは訳がちがうし、二日や三日の留守ではすまないにちがいない。
買い物でぎ
ゅ
うぎ
ゅ
うにな
っ
た庫内を眺めながら、倫太郎は腕を組み、思案した。
この冷蔵庫は、20年間休みまずに働いている。寝てもいない。金本や衣笠なんて屁でもないくらいの鉄人だ。
けれども、木星旅行へ出かけるには、コンセントを抜き、連続稼働時間をスト
ッ
プさせねばならない。
<そんなことが、俺にできるのか?>
冷蔵庫のドアを開け放
っ
たままの倫太郎の目には、う
っ
すらと涙が滲んでいた。
<今まで俺の食生活を力強く支えててくれた冷蔵庫、その彼を俺は裏切ろうとしているのか?>
店員のユー
コは
、「旅行は招待ですけど、NASAでのトレー
ニ
ング代として50万円が必要です
ぅ
~
」と丁寧に説明してくれた。
50万円は当然振り込むつもりだ
っ
た。そんなものは惜しくない。
が、本当にそれでいいのか、という疑問がとめどなくあふれ出してくる。
<俺は大事な何かを失おうとしているのではないか? こいつも一緒に木星に行けたらいいのに>
思わず、倫太郎はごつごつとした冷蔵庫に両手を回し、抱きしめた。
<20年連れ添
っ
たお前を置いていけるものか。ましてや、コンセントを抜いて仮死状態にするなんて>
そう決めた時、倫太郎の脳裏に耳慣れない声が届いた。
<倫太郎くん、ありがとう。でも、そんなにが
っ
かりしないで。木星は水素でできているんだ。僕の冷却媒体と同じだよ>
水素? お前は小さな木星みたいなものなのか?
疑問を口に出してみると、冷蔵庫のモー
ター
が唸
っ
た。まるで、イエスと返事をしているように。
<そうだよ。つまり、僕のドアを開けるということは、木星の地底探検をしているということさ>
その話を聞くと、倫太郎は冷蔵庫に鋭い視線を送
っ
た。何故か両方の目に怒りが浮かんでいる。
<お・ま・え、なあ
~
~
。何故今日までそれを黙
っ
ていた
~
。この間、箱のお題で冷蔵庫を出してしま
っ
たじ
ゃ
ないか。木星と同じなら、お前、箱じ
ゃ
なか
っ
たんだな!>
倫太郎は憤怒の表情で、冷蔵庫を蹴飛ばした。
車が正面衝突したような、重く鈍い音がする。ミルコも真
っ
青のハイキ
ッ
クだ。
<いて
っ
。
っ
て、あれ
っ
てタ
ッ
パー
が箱だ
っ
たんじ・・・・>
そこで頭の中の声が途切れた。
後で気付いたことだが、蹴飛ばした時の衝撃なのだろう、背面のコンセントが抜けていた。
3万円の買い物は、大半が無駄にな
っ
ていた。
ああ、神様。頼むから、ジ
ョ
ー
クだと言
っ
てくれ。
日の暮れた部屋で一人つぶやく、4月1日の出来事だ
っ
た。
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