第7回 てきすとぽい杯
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小説はひとつの鏡である
Wheelie
投稿時刻 : 2013.07.20 23:39
字数 : 885
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小説はひとつの鏡である
Wheelie


 今日は朝からOSの再インストールをしていた。以前と同じOS即ちWindows7であるはずなのだが、以前は入ていなかたアクセサリに気付く。もしくは以前から入ていたのかも知れない。なんてことのない只の付箋アプリケーンである。そんなわけで私は今、付箋アプリケーンでこの原稿を書いている。
 OSを再インストールしたので、Twitterのアカウント名を思い出せずにログイン出来なかた。パスワードでは無くアカウント名、所謂自分の呼び名である。自分の名が思い出せない。日常的にあまり無い出来事である。私は私になてまだ日が浅い。だから自身の名前のスペルを記憶していない。私の人間性は定まていない。思考は漂ている。只文章を生成するだけの何者かになろうとしている。物語の無い文字列を生成するための容れ物として。

 書くための材料を飲み込んでいく。インストールされたばかりの真さらなブラウザを起動し、主題となる単語を検索していく。主題と親しい言葉、反対の言葉、距離の遠そうな言葉を組み合わせていく。そうしてそれらしい文章を創りあげていく。
 原稿の一行目に書かれたものは私の言葉ではない。今この時間に幾人かの作家が同様の一文を用いて小説を書いているはずだ。そうして同じ文章から幾つもの異なる物語が生成されていく。
 私は付箋アプリケーンの画面を少し広げる。紙を模した黄色い窓は文字で埋まりつつある。このアプリケーンでフイルを保存する方法を私は知らない。迂闊に何らかのキーを叩いて画面を閉じてしまうこともあるかも知れないと思う。それならそれで構わない。

 できるだけ純粋な、ただの文字を。

 得るものが無いと分かている小説を、人は読むだろうか。知識も感慨も与えられることの無い文章。私はなるべく自動生成に近くなるようにキーボードを叩いてる。後先を考えずに。与えられた時間を充分に使い、空虚な何かを書き上げる。そうして最後に書き上げた文章をカーソルで選択する。文字列が青く反転する。Deleteキーを叩く。殆どの文字列が消失する。

「__党に清き一票を」
 という最初の一行だけを残して。
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