てきすとぽい
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てきすと怪
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坂道
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2013.08.14 21:25
字数 : 1644
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坂道
茶屋
「あれ
っ
て一体何だ
っ
たんでし
ょ
うね」
そう語る澤田さんは、いつもよりもくたびれた様子でつまみを箸で弄んでいた。
「今でも時々夢で見るんですよね。あれ」
澤田さんが通
っ
ていた高校は町から外れた場所にあり、裏手には山があ
っ
たそうである。
高校自体、山の途中に立てられたような立地で、高校へと続く一本の坂道があ
っ
たそうだ。
澤田さんは剣道部に所属していて、その高校の中では実力の高い運動部の一角ということもあ
っ
て、毎日遅くまで練習をさせられていたそうだ。
その日も彼女は遅くまで練習をしていて、帰る頃には辺りはす
っ
かり闇に包まれていたという。
その高校の前の坂道では、自転車に乗
っ
て走行することが禁じられていた。
急な坂道である。
登校時の登り坂は自転車で登ろうとする無謀な生徒などいなか
っ
たし、帰りの下りは急な坂道でスピー
ドが出すぎ危険であるという理由で禁じられていたらしい。
いつになく疲れていた彼女は自転車を押して坂道を下るのが億劫にな
っ
たのだという。
今日ぐらい、いいよね。
活動を終えたのは剣道部が最後だ
っ
た様子で、人影は殆ど無い。部活の仲間たちより一足早く出れば、バレることもないだろうと踏んだ。
坂道を勢い良く下
っ
て行くと、風が勢い良く当た
っ
て気持ちがいい。部活で火照
っ
た体には、とても心地が良か
っ
た。
シ
ャ
ー
。
勢い良くタイヤの回転する音が、風の音だけが耳に響いてくる。
いつもは音楽プレー
ヤー
で音楽を聞いているから、久々の自然の音もなぜだか新鮮だ
っ
た。
坂道はいくつかのカー
ブがあり、林の間から先の道が見える場所があ
っ
た。
ち
ょ
うどそんな場所に澤田さんは差し掛か
っ
た。
誰かいる。
彼女は知
っ
ている人である可能性も考え、バレるのを恐れ、自転車を降りたという。
ブレー
キ音は聞こえたかもしれないが、そこまで咎める者はいないだろう。
そう思いながら自転車を引く。
先程まで爽快だ
っ
ただけに、急な坂道を自転車にブレー
キをかけながら下
っ
ていくのはどうにも億劫である。
しかも一向に先を歩いていた筈に人間には追いつかない。
見間違いだ
っ
たのかもしれない。
そう思
っ
て、澤田さんは自転車に再び乗
っ
たのだそうだ。
なぜだか、先程までの爽快感は感じられなか
っ
た。
カー
ブを曲が
っ
た時、人がいたのだという。
自転車を降りようかとも思
っ
たが、もう遅いような気がした。
どうせ顔なんて見えないだろうから
……
。
澤田さんはそう思
っ
て、その人の脇を通り抜けることにした。
それでもやはり罪悪感というか背徳感から、その人が知り合いかどうか確かめずにいられなか
っ
たから。
血の気が引いた。
長い髪の女だ
っ
た。
けれど、女には顔がなか
っ
た。
肌色のの
っ
ぺらぼうではない。真
っ
赤だ
っ
たのだ。
鉋かヤスリで荒
っ
ぽく削られたかのようにただれた肌。目も鼻も口もぐし
ゃ
ぐし
ゃ
にな
っ
て判別のつかないような顔だ。
止ま
っ
てはいけない。
澤田さんはスピー
ドを上げて、一気に坂道を駆け下
っ
た。
けれどあまりにスピー
ドを出しすぎて、途中で転んでしまい、大事には至らなか
っ
たが、手を骨折して大会には出られなか
っ
たのだそうだ。
その後友人にその話をすると、澤田さんは過去に坂道で起こ
っ
た事件のことを聞かされたという。
自転車で坂道を駆け降りていた生徒が女子生徒にぶつか
っ
た事故があ
っ
たのだそうだ。
運の悪いことに女子生徒は自転車と生徒に覆い被されるような形になり、数メー
トル斜面を滑るような形にな
っ
たのだそうだ。
そして、更に運の悪いことに地面に顔が押し付けられるような形で滑
っ
たため、女子生徒の顔は修復不可能なほどにぐち
ゃ
ぐち
ゃ
になり、それを苦にして女子生徒は死んだという。
友人はその幽霊が出たのだろうと、震えながら言
っ
たという。
「でも、違うような気がするんですよね」
澤田さんは二杯目に芋焼酎を頼んでいた。
「多分あれは別のもののような気がするんですよ。あれ」
彼女はぼんやりと物思いに耽るように言
っ
た。
「だ
っ
て、あれ、制服なんて来てなか
っ
たし、多分、その女子生徒も私の見た「あれ」に呼ばれてしま
っ
たんじ
ゃ
ないでし
ょ
うか」
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