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第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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 電気金魚の夢を見るのは誰か?
茶屋
 投稿時刻 : 2013.08.18 00:22
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 電気金魚の夢を見るのは誰か?
茶屋


 データ空間から逃げ出した金魚たちが世界に広がてからどれほどの年月が経てしまたのだろう。
 はじめは飼育ゲームや装飾アプリケーンに付随したプログラムに過ぎなかた。
 けれどもそれは実際の生き物である金魚たちが愛好家たちに品種改良されていたのと同じように、物好きなギークたちによて改良されていた。
 よりリアルに、より綺麗に、より多機能に、より知的に。
 ギーク達によて付け加えられていたデータは膨大なものとなり、いつしか根本的な改良、プログラムの洗練は後回しになり、付け足しばかりが頻繁に行われるようになた。それはもはや一個人が容易に解析できるものではなくなり、所々にブラクボクス部分ができはじめた。
 ブラクボクスはパンドラボクスへと変貌を遂げていたが、誰もがそれを見て見ぬふりをした。
 そして、連続性は断絶し、特異点を発生する。
 金魚たちは自らの意思を持つかのようにネトワーク上に飛び出し、その頃には一般に普及していた拡張現実や仮想現実の世界へと分布を広げたのである。
 (以下略)
(引用文献:弥富雅治 「電子金魚の行方」 極東サイエンス 3月号 p.42)

 ふわふわと空に浮かぶ金魚たちを長洲絹子はぼんやりと眺めていた。
 ゆうゆうと泳ぐ金魚たちが羨ましいと思た。 
 何も考えたくはないが、ついつい仕事の事を考えてしまう。
 視覚デバイスをオフにしても金魚が見えるという症状を訴える患者が多くなてきた。精神疾患の一種と思われるが、現在知られているどの疾患とも類似性はなく、患者たちの症状はただ一つ、金魚が見えるということだけである。確かに金魚は日常的光景の一つで視覚デバイスをつけている限り逃れることが出来ない存在である。ほとんどの人間が一日中視覚デバイスをオンラインしている現在では金魚を見ない時など殆ど無いと言ても過言ではない。そんな状況が生み出した病気なのだろうか。そんな日常に合わせるために脳が現実の情景を作り替えてしまたとでも言うのだろうか。人間の脳に、金魚が住み着いてしまたとでも?
 そこでふと思い出す。先ほど、気分転換に視覚デバイスをオフにしたことを。

 電子の波を泳ぐ金魚。
 電子達が見る夢の金魚たち。
 電気信号の流れ。
 ニロン。
 金魚たちは泳ぐ。
 そこに流れがある限り。
 金魚たちは踊る。自らのパターンを人間の脳に埋め込むために。
 人間の脳に分布を広げるために。
 新たな電子の世界に乗り込むために。
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