てきすとぽい
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第8回 てきすとぽい杯〈夏の24時間耐久〉
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ポンプ
(
松浦(入滅)
)
投稿時刻 : 2013.08.18 14:05
字数 : 1000
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ポンプ
松浦(入滅)
夏祭り。
境内に屋台が集まり、騒がしくなる頃。
決ま
っ
て俺は、腹に耐えがたい不快感を覚える。
ああ、あいつらだ。あの眷属だ。
さびの浮いたような色の頭髪。しげるの出来損ないかと思うような日焼けした肌。
ヤンキー
だ。
アメリカ人という意味ではなくて。できの悪い日本人の方。
彼らとすれ違うたびに、腹部でヤツが動くのだ。俺の気持ちに応えるように。
ひ
ゃ
ひ
ゃ
、というゲスな笑い声が聞こえる。また今日もひとり、千代田区の愛好家が渋谷区の愛好家によ
っ
てたか
っ
て『親愛の情』を示されるのだ。
高校1年の夏だ
っ
た。
まだ、俺は俺だけの存在で。腹にヤツはいなか
っ
た。
夏祭りに行くまでは。
俺はありがた迷惑な親愛の情をかけられて、祭りの中にいた。本当は家でじ
っ
としていたか
っ
た。だが、あいつらには『はけ口』が必要だ
っ
た。取り巻きのために、最下層を用意しておかなければならないのだ。
「じ
ゃ
あ、罰ゲー
ムな」
俺が「そろそろ帰る」というと、あいつはそう切り出した。
「何がいいと思う?」
原作ジ
ャ
イアンをさらに悪化させたようなのが、取り巻きに振る。
「そう
っ
すね
ぇ
」
いくつか案が出された。どうでもいいような案だ。すべて却下される。
予定調和だ。最初から、決定権はあいつにしかないのだから。
「そうだ露木、これ飲めよ」
さも今思いついたかのように、さ
っ
きすく
っ
た金魚を掲げ、あいつはいう。
なんとい
っ
て拒否したのかは覚えていない。たぶん、「あー
」とか「うー
」とか。き
っ
とそんなんだ。
「聞こえねー
なー
」
「だから
……
。淡水魚は危ない
っ
て
……
」
「聞いたか? 今、露木先生がなんか教えてくれち
ゃ
っ
たぞ」
取り巻きが一斉に笑いだす。
「ぐだぐだ言
っ
てね
ぇ
で、早くしろよ?」
俺の眼前に、ポリ袋に入
っ
た金魚がいた。
赤く。ぬめ
っ
とした鱗までは
っ
きりと見えた。
「そら。露木が人間ポンプやるぞー
!」
取り巻きが騒ぎ出す。
そして俺は、腹に金魚を飼うことにな
っ
た。
「きみ。今日は暑いね」
俺は渋谷区代表の、しげるもどきの肩を叩く。
「あ? なんだよお
っ
さん」
かつての俺ならひるんだだろう。だけど、今は違う。
「泳ごうか?」
静かに俺はいう。
「やめろよ。なにすんだよ!」
彼は手を払いのけようとしたが、俺の肌はぬめり、抵抗を許さない。
俺はそのまま彼を掴んだまま、池の中へと入
っ
た。
彼らは水の中では生きられない。俺は共生相手のおかげで生きていける。
だからしげるもどきの心臓が止まるまで、俺は水中でじ
っ
としていた。
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