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第12回 てきすとぽい杯〈紅白小説合戦・紅〉
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 投稿時刻 : 2013.12.15 00:10
 字数 : 752
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太友 豪


 僕の知人が、長い長い撤退線を続けてきた人間にだけ共通する匂いがあるといていた。
 なるほど、匂いというのは言い得て妙な表現で、耳には聞こえず。目には見えず、けれども一度知覚してしまえば無視することは難しい。
 そういう匂いは消すことの出来ない烙印のように人間の奥深くへとしみこんでしまうものらしい。

 練炭はオレンジに輝き、僕たちの身体を温めてくれる。

 それこそ信じがたいことだけれども、事実として日本の世の中は信頼によて成り立ている。たとえば、明日もスマートフンでインタートにアクセスできることを疑う人間はいない。たとえば、契約書を取り交わせば、その内容が果たされると信じている。それは信頼があるからこそだ。
 今回の計画についても、ままごとのような(実際にそうなのだろう)契約書を取り交わした。
 ぼくは、血が恐ろしい。図鑑か何かで見た血漿が、尿とそくりでそんなものが自分の身体の中に流れているとおもうと、肌が粟立つおもいだ。
 ふと、鼻の奥に錆のような匂いが広がた。鼻木でも出たのかと手を当ててみても何の感触もない。
 先ほどからの息苦しさは、ワンボクスカーに七人も乗り込んでいるためだろう。
 車の外では白い雪が舞ているようだ。残念なことに、車はヘドライトさえ消しているので、実際には空から雨以外の何かが降てきている、くらいの感覚しかない。
 誰かが持ち込んだ睡眠薬のPTP包装シートとウスキーが回てくる。
 ぼくは白い錠剤をPTP包装シートから押しだし、しげしげと観察する。見た目は市販の風邪薬や痛み止めとほとんど変わらない。
 少し迷てから錠剤を四粒。琥珀色のウスキーでむせながら飲み込む。
 いくら待ても、白く輝く光なんてやてこなかた。
 アルコールと薬品の暮れる眠りのなか、僕の脳は一酸化炭素によ――
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