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クリスマスイヴぼっち小説大賞&ぼっちついのべ
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ディレイ・ナイト
(
犬子蓮木
)
投稿時刻 : 2013.12.25 01:41
字数 : 1207
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ディレイ・ナイト
犬子蓮木
厚いカー
テンをあけ、さらにわずかにひらいた窓の隙間から夜空を眺めていた。
ま
っ
くろな空には数多の星たちが暖かそうに輝いている。まるで幸せな家々の灯りのように暖かそうだ
っ
た。
あの人はまだこない。
わたしはそ
っ
とため息をはいた。
白い息が窓を曇らせた。また空をみあげて星を見る。ほんとうは星を見ていたのではなく、その隙間を縫うように飛ぶサンタクロー
スを探していたのだけど。
まだ帰
っ
てこないかしら。
今日はクリスマス。わたしの夫はあの有名な赤い服を着ていて、これまた赤い鼻のトナカイと一緒に、今頃、子供達にプレゼントを配
っ
ている。
だからクリスマスのパー
テ
ィ
はいつでも欠席。
来客なんていないパー
テ
ィ
の支度だけして、わたしは毎年のようにあの人の帰りを待
っ
ていた。毎年のこと、もう何十回目になるんだろう。
眠
っ
ていていいんだよ、とあの人はいうけれど、特別な夜にひとりで眠るのはさみしいとは気付いてくれないだろうか。それとも、もしかしたらわか
っ
ているのかもしれない。
どちらにせよ、わたしがさみしかろうとそうでなかろうと、あの人はこの夜に世界を飛び回らなければいけないんだから。
冷たい風が入り込んできたので窓を閉めた。窓に自らの姿が映る。もう若くはない。あの人も、わたしも。
豪華な食事を並べているテー
ブルに座
っ
た。空のシ
ャ
ンパングラスを手にと
っ
て、まだ火のついていないロー
ソクをガラスの向こうに見ていた。
静かで、暗くて、止ま
っ
ているような世界。
グラスを置く。渇いた音と、じぶんが動くわずかな音だけが聞こえて、わたしはテー
ブルに腕をのせ、その上に顔をあずけた。
目を瞑る。
眠りはしない。
あの人が帰
っ
てきたときのことを考える。
黒い世界が、雪に覆われるように白く変わ
っ
ていく。あの人が家の扉をあけたとき、わたしは、なんて言
っ
てやろうか。
「おつかれさま」
そんなにやさしいわたしではない。
「おそいじ
ゃ
ない!」
それはち
ょ
っ
とかわいそうかな、疲れてるだろうし。
「プレゼントは?」
なんて、年甲斐もなくち
ょ
っ
とおどけてみたりして。
ベルの音が聞こえた。
トナカイの首輪についているベルの音。
窓のほうを見ると空が白んでいた。もう朝が近づいて来ている。
トナカイがソリをひいて、空を蹴る足音も聞こえた。
夢ではない。
わたしはがば
っ
と顔をあげて、髪の毛に手で櫛をいれて、ドアのほうへ向か
っ
た。あの人が、扉の向こうでトナカイをつないでいるような気配を感じる。それから、大きな体をのそのそと動かしてゆ
っ
くりとこちらに近づいてくるのがわか
っ
た。
今、すぐ扉の反対側に、真
っ
赤な服を着て、疲れた顔をした、あの人が立
っ
ているんだ。
扉が開いていく。
光が差し込んできて、わたしは自然に笑顔にな
っ
て、考えてもいなか
っ
たことを言
っ
てしまう。
「クリスマスの夜はこれからだよ」なんて。
「もう朝だけど」サンタクロー
スは困
っ
た顔をしている。
「いいじ
ゃ
ない」
わたしは、わたしのサンタクロー
スに抱きついた。
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