クリスマスイヴぼっち小説大賞&ぼっちついのべ
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友達も恋人もいないのはあえてですから。
茶屋
投稿時刻 : 2013.12.25 00:47 最終更新 : 2013.12.25 00:49
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更新履歴
- 2013/12/25 00:49:28
- 2013/12/25 00:47:23
友達も恋人もいないのはあえてですから。
茶屋


 昼から降り続いた雪で、街は白く塗りつぶされる。
 雪は止み、冷たく透き通た空気のおかげで煌びやかな星空が見えるはずだが、地上の明るく色とりどりな電飾のせいかはきりしない。冷たい風が吹き抜け、白く湿た息を運び去る。
 ビルの屋上から、見下ろす街はいつになく賑やかだ。
 そうか、今日はクリスマスか。
 黒と白の世界の中で異様に目立つ赤を身にまとているが、全く縁のないイベントだ。
 俺はサンタクロースじない。
 俺は与えるんじなくて奪う。
 服を掴んでいた手を放すと、そいつは真逆さまに落ちて、鈍い音を鳴らした。
 たぶん、死んだ。可哀想だとは思う。よりによて、クリスマスに死ぬなんて。
 先に言ておくが俺は快楽殺人者とかそういう類の変態じない。かといて恨みがあてそいつを殺したわけじない。
 説明するのが難しい。
 あえて言うとしたら、趣味ようなものだろう。
 正義の味方。
 そう、俺は正義の味方なんだ。

 ヒーローというのは孤独なものだ、そうずと自分に言い聞かせてきた。
 元々は天涯孤独の身、心配する必要なんてなかたかもしれないが。
 愛する人もいない。
 友情を確かめ合う仲間もいない。
 誰も俺には近づいてこなかたから。
 いや、あえて寄せ付けようとはしなかたんだ。
 守るべきものがあるから強い。そんな台詞を見るたびに俺は吹き出しそうになた。
 だてヒーローが危機に陥るのはいつも恋人や友達をさらわれて人質のとられた時だろ?守るべきものを守るときに真の力を発揮できるともいえるだろうが、そんなものは修行が足りないだけだ。
 そんなもの初めからいらない。
 そんなものなくても強くなれる。
 愛なんていらない。
 友情なんていらない。
 ただひたすらに、悪を打ち砕く力を求めればいい。

 怪人を殴り、投げ飛ばし、折り、砕き、捩じ切り、潰す。
 白い雪は真赤に染まる。
 俺も真赤に染まる。
 今日は、楽しいクリスマス。
 愉快な歌を口ずさみながら軽快に、踊るように怪人どもをなぎ倒す。

 何のために生まれ、何のために戦う。
 そんなことは知らん。
 何のためなんてものは存在しない。愛を守るため?平和を守るため?そんなお題目が正義の味方に必要だとは思わない。むしろそんな連中は脳みそを花畑に寄生されてぶ壊れたか、頭のねじが吹飛んでるようにしか思えない。正義にそて悪をぶちのめせばそれで十分じないか。正義に味方していれば、それで正義の味方だ。敵の敵は味方ていうだろ?悪の敵である俺は、正義の味方だろ?

 Question.
「何故邪魔をする」
 息絶え絶えに、怪人は俺に疑問を投げかける。
 Answer.
「気に入らないんだよ。てめえらが」
 俺はとどめを刺してさしあげる。

 悪とは?正義とは?
 正義の味方ならだれもが悩む疑問かもしれない。答えを見出そうと、ヒーローたちは苦しんでいく。
 だが、俺は苦しむことは無かた。
 そんなもん自明だ。悪いことが悪で、良いことが正義だ。俺は良いことはしないが、悪をつぶすから正義の味方だ。
 人体を改造して強化するのは悪いことだろ(正義の味方は例外)。
 暴力で何かを変えようとするのは悪いことだろ(正義の味方は例外)。
 ともかく、秘密結社の連中は悪い奴ばかりだてわけだ。

 闇夜を切り裂く乙女の声。
 俺はすぐさま深紅の炎に身を焦がし、鎧を身に纏う。超高速で風を切り、雪を吹き飛ばしながら。
 怪人と若い女がいた。
 女は言う、「助けてください」と。
 俺は言う、「嫌だね」と。
 他人を助けるなんてまぴらごめんだ。
 この女が死のうが俺には関係ない。
 俺は誰かを守るために戦うんじない。
 俺は悪を倒すためだけに戦うんだ。
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