てきすとぽい
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輝き! プロット頂戴大賞
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…
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どんぐり食い
(
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
)
投稿時刻 : 2014.01.12 00:14
最終更新 : 2014.01.12 10:06
字数 : 5802
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目次
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更新履歴
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2014/01/12 10:06:28
-
2014/01/12 09:51:53
-
2014/01/12 09:51:35
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2014/01/12 09:50:20
-
2014/01/12 00:14:25
1 / 2
どんぐり食い
゚.+° ゚+.゚ *+:。.。 。.
大叔父は偉大な人だ
っ
た。ぽそぽそした焼き菓子を口にしながら、エヴ
ァ
ンはそれを実感する。香ばしい匂いに唾液が急速に分泌され、顎がほんの少し痛んだ。大叔父に教わ
っ
たレシピで作
っ
たどんぐりのク
ッ
キー
だ。幼か
っ
た頃、生のどんぐりを食べてあまりの渋みに泣き出してしま
っ
たことを思い出す。それ以来す
っ
かりどんぐりを避けてきた自分に、大叔父が残してくれたレシピだ。彼は何でも知
っ
ている人で、何でもできた。
「すごいわ、これ、全部エヴ
ァ
ンが作
っ
たの?」
アイラの問いかけに、エヴ
ァ
ンは我に返る。気づけばク
ッ
キー
の皿はほぼ空にな
っ
ていた。どんぐりパイの皿を手元に引き寄せ、ナイフで切り分けながらエヴ
ァ
ンは答える。
「大叔父に教わ
っ
たレシピで作
っ
たんだ」
アイラの目がかすかに潤んだのを、エヴ
ァ
ンはもはや見ていなか
っ
た。切り分けたパイにフ
ォ
ー
クを突き刺す。焼きたてのパイ生地がさくりと軽い音を立てた。白い指先が動くと、アイラの目は吸い寄せられるようにそれに向き、パイがエヴ
ァ
ンの口に放られるのをじ
っ
と観察した。
エヴ
ァ
ンの大叔父であるサムが亡くな
っ
たのは1週間前のことだ。エヴ
ァ
ンの意向もあ
っ
て、大々的な葬儀は行われなか
っ
た。唯一の肉親を失い、エヴ
ァ
ンは16歳にして天涯孤独の身とな
っ
た。住居である天文台から一度も出てこない彼が心配になり、アイラがこうして訪れてみれば、エヴ
ァ
ンは大量の料理をテー
ブルに並べ黙々と食していたのだ。予想外のことに驚いたが、大叔父のレシピであると聞いて納得した。エヴ
ァ
ンはこうして、一人で、唯一の肉親の死を悼んでいるのだと。
「あたし、お邪魔だ
っ
たかしら
……
?」
アイラのことなど見えていないかのように黙々とパイを食べ続けるエヴ
ァ
ンを見ていると、一人にしておくべきだ
っ
たのだろうか、とアイラはほんの少し不安になる。彼はいつも物静かで、誰かとつるむことなく、一人の時間を愛しているように見えた。村にある唯一の学校で机を並べていたときも、卒業して星見の仕事のために一人空を見ているときも、どこか影があ
っ
て、それはどこか寂しそうにも見えたし、それと同時に心引かれずにはいられなか
っ
た。
アイラの言葉に、エヴ
ァ
ンは急に何かを思い出したように手を止めた。椅子から立ち上がる。ゆ
っ
たりとした様子でキ
ッ
チンの戸棚まで歩いていくと、客人用のカ
ッ
プを取り出し、アイラの前にそ
っ
と置いた。
「コー
ヒー
は好きだ
っ
たよね?」
「あ
……
構わないで。あたし、ただ、エヴ
ァ
ンが心配で来ただけなんだから」
「そう」
相づちを打ちながら、エヴ
ァ
ンはカ
ッ
プにコー
ヒー
を注いだ。湯気が立ち、香りが部屋中に広がる。どんぐりのコー
ヒー
だ。
「ありがとう」
そう言
っ
てエヴ
ァ
ンが薄く笑う。外は雨が降
っ
ていて、まだ昼過ぎだというのに薄暗い。その中でエヴ
ァ
ンの白い肌が浮き上がるようだ
っ
た。わずかに下が
っ
た目尻が、いつも涼しげな顔をしているエヴ
ァ
ンの表情は急に優しげに、甘く変化させる。それを見ていると、アイラは頬が急に緩んでしまうのを止められなくな
っ
た。
「よか
っ
たら、食べて。どんぐりのプリンだ」
そう言
っ
て手作りのプリンをアイラの前に置く。皿の上で、ぷるんと震えた。エヴ
ァ
ンは再び黙
っ
て食事を続ける。卵と牛乳だけで作
っ
たものと違い、裏ごししたどんぐりを混ぜ込んだプリンは独特の舌触りと風味がした。それもすぐ胃袋の中に入
っ
ていく。それからパフ
ェ
にスプー
ンを差し入れる。それと同時に、荒々しく玄関の扉の開く音が鳴り響いた。雨水で湿
っ
た大地の匂いが部屋に入り込んだ。それに混ざ
っ
て、火薬の臭いが漂
っ
てくるのを、エヴ
ァ
ンだけが感じていた。それだけで、その招かれざる客が誰であるかをエヴ
ァ
ンは悟
っ
た。
「ダロ!」
音に驚いたアイラは体を強ばらせて振り向き、それからその名を叫んだ。
ノ
ッ
クも声がけもせず入
っ
てきた大柄の男は、エヴ
ァ
ンと向き合い椅子に腰掛けるアイラを見て眉をひそめながら、大股で部屋を横切り、エヴ
ァ
ンたちのいるテー
ブルにまでや
っ
てきた。雨で濡れた裾から水が滴り、床にぽつりぽつりと染みができる。
「昨日、木こりのトー
マが死んだ」
アイラの幼なじみであり、村の猟師の一族であるダロは、前置きもせずにそう切り出した。エヴ
ァ
ンは椅子に座
っ
たまま、黙
っ
てダロの顔を見上げる。アイラはあからさまに顔をしかめた。
「爪のようなもので首をひと
っ
かきだ。大きさや深さから言
っ
て、大型の獣に襲われたと見て間違いない。熊だ」
にやりと口に笑いを浮かべると、ダロはテー
ブルの上にあ
っ
たどんぐりを一粒、手にとり、口に放
っ
た。炒
っ
ただけのものだ。エヴ
ァ
ンは黙したままただそれを見つめる。アイラが声をあげた。
「何の話よ、勝手に人の家に上がり込んで」
「最近、そんな事件ばかりだ。この前襲われたマー
サは幸い一命を取り留めたんだがな、妙なことを言うんだ。襲われたとき、熊だけじ
ゃ
なくて、華奢な男の影を見た
っ
てね」
もう一粒、どんぐりをつまむと、ダロは断りもせずそばにあ
っ
たソフ
ァ
ー
に腰掛けた。
「どこかで聞いた話だと思わねえか」
「
――
やめなさいよ!」
ダロの言わんとしていることを悟
っ
たアイラが、大声をあげて立ち上が
っ
た。
「馬鹿馬鹿しい!」
アイラの叫びに多少苛立たしげな表情を見せながら、ダロは黙
っ
たままのエヴ
ァ
ンに顔を向けて続けた。
「10年前に子供を置いて逃げ出した、お前の親みたいな
――
な」
「くだらない」
吐き捨てるように言うと、アイラは二人の間に割
っ
てはいるように歩み出した。
「熊を使
っ
て無差別殺人なんて、い
っ
たい誰が言い出したのよ。ばかげてるわ。しかも村の人間を疑うなんて。一体この村のどこに、そんな猛獣を飼育する場所がある
っ
て言うの」
「見たんだよ」
今度はダロはアイラを真
っ
直ぐに見つめた。挑発的な笑みは消え、アイラに言い聞かせるかのように、真剣な顔で、続けた。
「俺もこの前、自警団と森をパトロー
ルしている時に、怪しげな熊を見た。あれはこの辺りにいる種とは違う。それに、野生にしては様子が変だ。飼い慣らされてるようだ
っ
たし、その辺の木の実を食べているだけであんなに肥えているのも不自然だ」
そこまでダロの話を黙
っ
て聞いていたエヴ
ァ
ンは、コ
ッ
プに満たされたどんぐりのジ
ュ
ー
スを飲み干した。焼き菓子にするより、炒
っ
たものを食べるより、これが一番効率よくどんぐりを大量に摂取できる。テー
ブルに置いた空のコ
ッ
プが音を立てた。夢中にな
っ
てアイラに話を聞かせていたダロが彼に視線を戻すと、いつになく挑戦的な表情のエヴ
ァ
ンの視線に射抜かれた。
「それで」
薄く笑みを浮かべたエヴ
ァ
ンが、静かに尋ねた。
「きみは、俺に何を聞きにきたのかな」
一見穏やかに見えるが隙のないエヴ
ァ
ンの様子に、勇んでいたダロが急に気圧されたかのように見えた。それに気づいたアイラがここぞとばかりにもう一度責め立てる。
「そうよ、あんた、何しに来たのよ、帰
っ
て!」
「
――
アイラ」
詰めよりかけたアイラの腕を、ダロが半ば反射的に握る。ぎ
ょ
っ
として逃れようとした彼女を、しかしダロは逃がさなか
っ
た。
「この前のプロポー
ズの返事はどうな
っ
てる」
「お断りだ
っ
て最初から言
っ
てるわ! あんたみたいな乱暴者!」
鋭く叫びながらそれをふりほどこうとするアイラに、ダロが小さく舌打ちする。それと同時に、ゆ
っ
くりとエヴ
ァ
ンは立ち上が
っ
た。その気配に、ダロが反射的にアイラを解放する。
「
……
俺は、この村の自警団の一員でもある。犯罪者は絶対に許さない。近いうちに必ずお前の尻尾をつかんでやるからな」
低くうなるようにそう言い放つと、ダロは二人に背を向けた。大股で立ち去る彼が、来たときよりもわずかに早足にな
っ
ているのを、エヴ
ァ
ンは見逃さなか
っ