短歌小説コンペ
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遊女の恋の物語
みお
投稿時刻 : 2014.02.11 22:45
字数 : 389
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遊女の恋の物語
みお


江戸の闇、裂いて輝く花の町。
色は匂えど 儚き恋の、
酔狂、一夜限りか恋の夢。
乱れ絹花、重なる躰。
泡沫の、叶わぬ恋と知りながら、
恋に溺れた、男と女。

雨の夜、駆ける二人は足抜けの、
向かうは地獄か、極楽浄土。
祈り擦る、爪繰る数珠の森の奥。
「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
愛し人。来世で共にとすがりつく、
その手は哀れ、振り払われた。
断末魔、朱に染まりし逃避行。
ただ見つめるは、早咲き桜。
無我夢中、逃げる男の背を睨み、
女は鬼に、変わりけり。

時流れ、江戸の深森、鬼ありき。
それは満天、桜木の森。
血をすすり骨を砕いて人喰らう、
鬼が歌うは、恋物語り。
 



「その後は?」
幕引きのちに、聞く男。
知りたいならば、語りましうや。
「さあこちら」
誘う桜の花舞台。
やがて聴こえる、南無阿弥陀仏。
彼は知る、前世に犯し罪の業。
裏切り非道の、一夜の恋を。

舞台袖、男抱き寄せ泣く鬼の、
口から漏れる、南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
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