てきすとぽい
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第14回 てきすとぽい杯〈オン&オフ同時開催〉
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♪さようなら、○ちゃん
(
太友 豪
)
投稿時刻 : 2014.02.08 19:00
最終更新 : 2014.02.08 19:02
字数 : 883
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更新履歴
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2014/02/08 19:02:13
-
2014/02/08 19:00:31
♪さようなら、○ちゃん
太友 豪
大きなキ
ャ
リー
カー
トを引いたたくさんの人たちが、楽しげな笑みを浮かべて足早に通り過ぎていく。
ここはとある駅。その2二階部分に当たるコンコー
スである。
天井に埋め込まれたスピー
カー
から心が浮き立つような明るい調子の音楽が賑やかに流れてくる。その音量に負けないくらい大きな声でふざけあ
っ
ている少女達。
少数の例外を除いて、駅はあくまでも通過点でしかない。だから、乗客達の目的地のイメー
ジに合わせてこぎれいにデザインされた駅自体に目を向ける人はほとんどいない。
3階のホー
ムと2階のコンコー
スとをつなぐ四列並んだエスカレー
ター
の手前にコインロ
ッ
カー
がある。いわゆる交通系非接触ICカー
ドでも支払いすることができる新しいものだ。
コインロ
ッ
カー
のほとんどには赤いランプがとも
っ
ている。そのロ
ッ
カー
がすでに使用されているということだ。
首都圏外からも多くの利用客が来るこの駅では、大きなコインロ
ッ
カー
から先に埋まるという傾向がある。遊園地の近隣のホテルは高いので、大きな荷物をロ
ッ
カー
に預けてから遊び、夜にな
っ
たら荷物を取り出して離れたビジネスホテルなどに宿を求めるのだ。
だから誰も、コインロ
ッ
カー
の前で長々と立ち止ま
っ
たりしない。
少し不審なことがあ
っ
ても、自分に直接関係がなければ素通りするだけだ。
「ねえ、赤ち
ゃ
んの泣き声しない?」
飛行機と電車を乗り継いできた女の子は、中学時代からの友人に向か
っ
て尋ねる。
熊のぬいぐるみを抱いた友人は肩をすくめてみせる。
二人は運良く一番大きなサイズのロ
ッ
カー
を確保することができた。このサイズなら二人のキ
ャ
リー
カー
トを入れることができる。大型ロ
ッ
カー
の上にはいくつか小型ロ
ッ
カー
があいているが、それでは小さすぎて二人のキ
ャ
リー
カー
トをしまうことができないのだ。
他の人も一番ちいさなロ
ッ
カー
に用もなければ、興味を抱くこともなく足早に過ぎていくだけだ。
「そんなことよりはやくいこうよ! もうオー
プンしち
ゃ
うよ」
その日、二人は心ゆくまで楽しんだ。
こうして、まだ名前もない誰かさんは、縦・横34センチ、奥行き57センチの鍵のかか
っ
ていないロ
ッ
カー
の中で死んだ。
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