監視カメラ
署の管轄内で警官による殺人事件が発生した。
相手の未成年は、札つきの不良少年である。このまま生きていたところで将来、犯罪者になるのは確定事項だ。
事件発生時に組まされていた警官はもちろん誰も証言をする気などない。少年の家は貧しく、訴訟の費用はおろか明日の家賃の支払いも怪しか
った。
暴発事故として処理することに署内は一致している。警察というのは一種の家族だ。実際に親や親類が同僚の場合も多く、連帯は強い。しかし、この決定を当の本人、被疑者である警官に伝える術がなかった。なぜなら署内のいたるところにカメラが設置されており、取調室は、その最たるものである。つまり、記録が残ってしまうのだ。パトカーの車内も同様である。
彼は、当然ながら動揺していた。普段ならば気付いたであろう俺の仄めかしにまったく反応しない。猜疑心の塊だ。
俺は腹部から血を流しながら車のシートを這いずる。
「嫌だ、嫌だ。刑務所になんか入らないぞ。俺が何をしたって言うんだ。あんなチンピラ、どうだっていいだろ?」
俺の銃を構えている彼の呪詛に頷いた。言葉を絞り出そうとした俺は更に二発、撃たれる。
仲間意識が遮音材の上を赤く流れていた。