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人類の永遠の戦い
(
るぞ
)
投稿時刻 : 2014.02.08 19:14
最終更新 : 2014.02.08 19:18
字数 : 1737
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2014/02/08 19:18:46
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2014/02/08 19:18:13
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2014/02/08 19:14:59
-
2014/02/08 19:14:23
人類の永遠の戦い
るぞ
ある時期から、人類の誰もが知
っ
た伝説がある。
昔々、ある男が、寺院で不思議な女性と出会い、逢瀬を重ね、やがて一本の草を渡されたという伝承があ
っ
た。
草はリボン結びに結ばれており、彼女はまた会う約束として、この草の結い目を、解かない様にいいつけたのだという。
あるいは、そんな言いつけはなか
っ
たのだとも言う。
いずれにせよ、これらの説話は、「事件」が起こ
っ
てから流れたものであり、後付の創作なのか、実際に起こ
っ
たことなのか、人類にそれを知るものはいなか
っ
た。
[#改ペー
ジ]
確かなことは、古代の遺跡である寺院から、リボン上に結われた瑞々しい草が発見されたこと。
そして研究室に持ち帰
っ
た考古学者が、草をほどいて弄繰り回しているうちに、いつの間にか草が二束に増えていた、ということだ。
草は数時間後にさらに倍にな
っ
た。
分裂して増え続けていたのだ。
これに気づいた学者は、慌てて草を燃やして
燃やした灰からも草が分裂して増えてしま
っ
た。
切り刻んでも、酸につけて溶かしても、その跡から草は分裂し続けた。
このまま倍々のペー
スで増え続ければ、いずれはこの世界を埋め尽くすようになる。いや、それ以前に自重で押し合
っ
て潰れ合い、ブラ
ッ
クホー
ルと化すだろう。
燃やし続ければ無限の燃料になるかも、と一昔前なら思
っ
たかもしれないが、常温核融合炉が安定して稼動する現代においては、エネルギー
供給元としての価値もなか
っ
たし、なにより灰が無尽蔵に増えては、結局宇宙の破滅は避けられない。
凍らせれば分裂速度は下が
っ
たが、しかし絶対零度下に置いても、分裂が止まるわけではなか
っ
た。
最終的に人々は、この草を全て光速宇宙船に乗せて、時間を可能な限り遅らせることで決着を見ることにした。
光速宇宙船はメンテナンスの都合から、遥か彼方へ飛んでい
っ
てしまうのではなく、円を描く起動で飛び続ける。
しかし、ある研究員はこ
っ
そりと、この草を一本だけ宇宙船に草を乗せずに保存していた。
液体窒素に漬け込んだ草を、解凍した彼は、それを伝説にあるのと同じようにリボン結びにして、かつて恋する女性へと贈
っ
た。
彼は過労で心をわずら
っ
ており、強い自殺願望を抱いていた。
結局人類を巻き込んだ、自殺と、最後の思い出をロマンテ
ィ
ッ
クに飾る、一石二鳥の手段として、こんなことを思いついてしま
っ
たのだ。
[#改ペー
ジ]
「それで、人類はそいつの自殺に付き合わされて、滅びる破目に
……
なる予定だ
っ
たわけだ」
私の目の前で、男は笑
っ
た。
「そう。でも、それこそが解決方法だ
っ
たのだな」
10年の付き合いがある、人間として考えれば、十分親友と呼べる月日をともに過ごした男に、私は答えた。
「まさか、リボン結びにしてある間は、増殖しないとはな」
「人類はすぐさま、宇宙船を止め、草を全てリボン結びにした後、残らず燃やし尽くした。結ばれた状態で萌えた草は、増殖能力を失
っ
ていたため、これにて絶滅が完了した」
「
……
ま
ぁ
、これはその残滓
っ
てところだがな」
男はデ
ィ
スプレイに写
っ
たニ
ュ
ー
ス記事を指差した。
草の殲滅作業にかかわ
っ
た、マルコという名の研究員が、こ
っ
そり草を持ち逃げしようとして、逮捕され、国家反逆罪で処刑されたというニ
ュ
ー
スだ。
「あれは対処法を知らなければ、手のうちようがないし、人手に負えない量までこ
っ
そり増やされれば、対処法を知
っ
ていてもどうにもならない。見つからないところに隠した「草」を解くぞ、と脅しをかけることも出来る。地球を人質に取る兵器として使える
っ
てわけだ」
気の毒に、と思いながら、我々は地球から去
っ
た。
人間への擬態を解きながら、私は悲しい気持ちを味わ
っ
ていた。
人間の女性に擬態した同胞を使
っ
て、かつて地球に我々の植物を送り込んだプロジ
ェ
クトは失敗に終わ
っ
たのだ。
地球上の誰もが知
っ
ていた。
トウモロコシとイモを中心とした栽培技術が極端に発達し、栄養素が多く取れるようにな
っ
た現代でも、未だに無から食物が取れるわけではなく、食糧問題が解決していない地域が、まだ多くあることは。
だが、地球上の誰も知らなか
っ
た。
マルコと呼ばれた研究員は、過去の植物や文化にも詳しか
っ
たことを。
あの草は、小麦と呼ばれるもので、今は珍しくな
っ
た食文化の根幹を支えていた、栄養豊かな穀物だ
っ
たことも。
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