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犯人はオレだ! シンを背負いし者大賞
〔 作品1 〕» 2  5 
ある悪徳の記録
 投稿時刻 : 2014.02.19 00:18
 字数 : 3887
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ある悪徳の記録
たこ(酢漬け)


 #1
 準備は万全だた。凶器のナイフに帽子と、マスク。それから手袋。変装用の付け髭まで用意した。着る服も特徴の無い目立たないものにして、夜道に抜け出した。
 都心から少し離れたところに位置する住宅街であたが、駅前の商店街には結構な数の人が歩いていた。
 その中を普通に歩いていく。行き交う人の流れの中に溶け込んでしまえばやはり目立たないものだ。すれ違う人の顔を覚えている人間なんているわけがない。
 凶器を懐に忍び込ませているというのに、誰も気にすることもない。そのことに少し笑いが込み上げそうになた。
 おと、いけない。平然を装わなくては。
 平然を装て切符を買い、発車間際の電車に飛び乗る。
 目的地の駅前に降り立ち、マクドナルドのハンバーガーを持ち帰りで注文した。
 案外予想通り、紙袋に入た商品が渡された。
 私は中身などはいらなかた。が、とりあえず食べることにした。近くの雑居ビルに侵入し、鉄骨で作られた非常階段を上て行く。意識して歩けば足音など聞こえない。さすがスニーカーである。
 私はなるべく上の方へ上り、なるべく景色のいいところに立てハンバーガーを食べ始めた。そんなことしなくてもいいのかもしれないが。とりあえず、紙袋の中身を空にする。
 それから、付け髭をつけ、その上からマスクをかける。そして、サングラスを掛け、帽子を眼深に被た。
 この間に少し時間がかかたが、幸運にも非常階段には誰も人が来なかた。
 そして、懐からナイフを取り出し、紙袋の中に入れた。ナイフで袋が裂けないかと思たが、底の部分に紙ナプキンを敷き詰めればそれなりに持ちそうであた。
 そして、私は階段を下りていく。少しだけ心臓が高鳴たが、深呼吸をして抑えることにした。
 道路に出ると、相変わらずたくさんの人が行きかていた。
 目撃者が増えるので、あまり人は多くない方が良かたが、目立ちたいという願望が少しだけ私の心をくすぐた。
 なるべく心を落ち着かせて、歩道を歩いていた。
 酔ぱらたサラリーマンや、ホスト。学生のような若い子の姿も見えた。
 私はなるべく目立たないところにいる、隙を見せている人間がいないか伺た。誰もかれも、酒に夢中で私のことなど気にも留めていないようでたが、一度だけすれ違た男性にちらりとこちらの方を見られた。
 サングラスにマスク、メプという出で立ちだたが、少し目立たのだろうか。どちらにしろ声を掛けられなかたのは幸いである。
 ナイフの柄の位置は把握している。あとは紙袋を突き立てるだけだた。
 ふと、対面から赤い顔をして笑いながら歩いてくる男性の姿が見えた。その男性は少し派手な格好をした女性を連れていた。もうこの際どうでもよかたのでささと実行して家に帰りたかた。
 すれ違いざまに、思いきり紙袋を男性に押し当てた。
 脇腹の少し下から、斜め上方向に向かて。
 後のことはよく知らない。
 まだ私がここにいるということは成功したのだろう。マスクを外し、付け髭のまま回り道をして家へと帰た。

 #2
 あたしは買われるのを待ている。準備万端だ。金をもていそうな男に色目を使う。
 今日も客ができた。あたしは心を弾ませて男についていく。腕を組んで胸を当てて、ちろいもんだ。こうして今日も禿げ上がたオヤジの相手をする。
 ラブホに入て、シワーを浴びる。ここまではとても愛想よく。それから、裸になる。たまに服を着たままて言う要求をされるけど、その時の方が楽だ。エモノを隠せるから。
 それから長い愛撫をして、挿入される。
 あたしは機会を伺て騎乗位に持ていく。一回目のプレイでそれがなかたときはあたしから強引に迫ることもある。
 相手はセクスのことだて思てるから楽だ。
 馬乗りになて相手にキスするふりをする。その一瞬を見計らて、男の首に手をかける。
 耳の下あたり。頸動脈のあたりをきちんと狙て。
 男の最後の一瞬を楽しませる為にできる限り腰を振る。本当に昇天しながら死んじうこともあてあたしは驚いた。
 今回も何とかうまくいた。
 一人でシワーを浴びる。
 それからゆくり男の金品を物色する。
 お金なんて全部もらう。
 だてそれで暮らしてるし。
 ラブホにも監視カメラがあるから出るときには気を付けないと。
 目的を果たしてそそくさとラブホテルを出ると、あたりは騒ぎになていた。
 なんだか男の人が刺されたみたい。結構な人だかり。
 は、あたしもいつまで生きられるのかな。
 それに捕まりたくもないや。
 あたしは次はどこの町で暮らそうか考えながら、暗い裏路地へと入て行た。

 #3
「私が死んだら遺骨は太平洋の海岸に撒いてください。あそこには子どもの頃によく行たので、すごく思い出深いからです。私が死ぬ理由は実はこれぽちも考えていませんでした。これを書きながらもまだ現実味がなくてまだ夢を見ているかのようです。ただ少し疲れてしまいました。いろんなことに疲れて、今でも体が重いです。早くこの重圧から解放されて楽になてしまいたい。最近の私はそんなことばかり考えるようになりました。私が死んだからて悲しまないでください。きと他の人には素晴らしい人生が待ています。私は希望を持てませんでした。何をやてもダメで、だからこんなことになているのかもしれないですけど。残された家具や本などは処分してもらて構いません。私はこれからあの世に行こうと思います。お父さん、お母さんごめんなさい。でも、許してください。これしか解決方法が見つからないのです。さようなら。よき人生を」
 男はそこまでをパソコンでタイプし、プリンタで印字し始めた。暗い部屋の中でプリンタのきしむ音だけが鳴り響いている。
 手袋をしたので、キーボードに指紋は残ることはないかもしれない。ふき取てしまうと逆に不自然だろうか。
 男は人の家でまるで寛いでいるかのように椅子の背もたれに体を預け、そんなことを考えていた。
 彼の背後には首つり死体がぶら下がていた。
 男は印刷し終わたA4の紙をそと机の上に置き、静かに部屋を去て行た。

 #4
 やぱり駄目だ。あれがないと。喉が渇いてしうがない。
 引き出しの中から注射器を取り出して、バンドを二の腕に巻く。白い粉を水に溶きながら、渇きと戦ていた。
 早く楽になれるという期待と、針を腕に刺すスリルが混然となて頭の中を駆け巡て行た。
 用意はできた。注射針の先を白い液体の中に差し込み液体を吸い上げる。それを左腕の血管のところへ持ていく。バンドで圧迫しているので血管が浮き出ているのでわかりやすい。
 そと、針を肌に突き刺す。微かな痛みが走る。シリンダの中に入ている液体をゆくりと押し出す。
 張りを引き抜き、ガーゼで腕に開いた穴を抑えた。うすらと赤い血がにじんでいく。
 それを見つめながら、徐々に、気分が高揚していく。
 あ、あ、いけ、そう。
 いけるかも。
 あ、う、ああ。

 気づいたら、雑居ビルが立ち並ぶ路地裏で、ゴミを被た状態で目が覚めた。

 #5
 あたりが騒がしくなてきたので、私は近くの雑居ビルに逃げ込んだ。幸い誰の目にも触れなかたので、調子に乗て屋上に行くことにした。
 鍵が開いていたので、私は屋上に忍び込んだ。闇夜に光るネオンサインがあちらこちらに煌めいていた。
 灰皿が無かたが、私は煙草に火をつけて、手摺にもたれながら眼下の景色を眺めていた。
 救急車のサイレンが鳴り響き、赤い光があちこちに反射していた。
 私はタクシーを降りて、左右に住宅が立ち並ぶ道を歩き始めた。深夜だたので誰も歩いていなかた。
 付け髭を外し、サングラスを外し、帽子を脱いだ。あとはこれらの捨て場所を探すだけだた。そこら辺の川に投げとけばいいかもしれない。私は自宅のドアを開けた。
 あたしは白いシーツの布かれたベドの上で目を覚ました。下着だけだとちと肌寒かたかもしれない。机の上にはチンタイシクケイヤクシと書かれた難しい書類が置かれている。あとはこれにサインして別の街に引越すだけだ。
 窓からは街灯の光が差し込み、部屋の中を微かに照らしていた。雨が降り出したかもしれない。
 残業をしながらパソコンでデータ入力をしていると、遠くの方でサイレンが聞こえた。少しの間席を立ち、携帯電話で妻に電話を掛けた。「帰りが遅くなる」そう伝えるために。
「今日もなのね」妻はそう答えた。背後ではテレビのバラエテ番組が流れている音がした。
「雨が降てきたから気を付けてね」
 妻はそう言てから、電話を切た。
 再びデスクに戻り、つまらないデータ入力へと戻た。
 目を覚ましたら訳の分からないところに放りだされていた。しかも雨まで降りだした。
湿気で生ごみが異臭を放ち汚水が浸み出し始めていた。
 路地を出ると、救急車やら警察やらが集まて大騒ぎをしていた。野次馬も集まている。
 なぜかそちらの方にふらふら歩いて行てキープアウトのテープの向こうを覗いてみた。
ブルーシートの影に隠れて、道路に広がた赤い水たまりと、人間の下半身が見えた。
 警備の警察に嫌な顔をされて、遠くの方へ追い返された。
 ポケトに手を突込んだら財布も携帯も無かた。
 私は夜中に目をさまし、コプ一杯の水を飲んだ。
 あたしはネトの出会い系サイトで次のタートを探していた。
 終電間際の電車に乗り込み、満員の乗客の中で、真暗な窓の外を眺めていた。
 頭がガンガンするが、何とか家の方角へ向かて歩き出した。
 雨が降り続いていた。
 音のないサイレンが赤い光を発しながら回転していた。
 全ての犯罪が忠実に遂行された。
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