てきすとぽいトップページへ
犯人はオレだ! シンを背負いし者大賞
 1 «〔 作品2 〕» 3  5 
悪徳の監視者~グレーゾーンを渡る者~
 投稿時刻 : 2014.02.23 07:36 最終更新 : 2014.02.23 07:48
 字数 : 3921
5
投票しない
更新履歴
- 2014.02.23 07:48:14
- 2014.02.23 07:36:41
悪徳の監視者~グレーゾーンを渡る者~
たこ(酢漬け)


 薄暗い部屋の中でタワーPCのフンが回る音がする。一台の音はそこまで大きくは無いが、何台も起動しているため、音量が大きくなている。こんな台数のPCをいたい何のために使うのは助手の私には分からない。
 お師匠様は安楽椅子に座て真剣な表情で何台もの画面を眺めている。明かりはつけていないのだが、画面の光で部屋の中はそこそこ明るい。
 この前お師匠様に聞いたら電気代の節約だと言ていた。
「お前、コーヒーこぼすなよな」
「はいい。気を付けます」
 お師匠様はぶきらぼうにマグカプを受け取た。お師匠様のマグカプの扱い方の方が中身をこぼしそうである。
 青白く光る画面の中を覗いてみると、何ケタもの数字の羅列が並んでいた。
 010001010001010001011010
 0100100101011101110111010
 1101010011011010111011101
 0101110110010101011010101
 1101010110111011110101010
 ・・・・
「お師匠様。これは何です?」
「お前わかるのか?」
「いや、分かりませんけど」
「ま、見てろて」
 その数字の羅列はいつぞやの映画で見たようなものであた。
 お師匠様があるソフトを起動すると、部屋内のPCのいくつかが反応した。一体どれだけの負荷をかけているんだ。
 そして、画面の中に
 0100100101011101110111010
 という一列だけの数列が表示された。
「来たよー。あとはこれをパケトの中に埋め込めば・・」
 お師匠はそう言て何かのプログラムを書き出した。
 お師匠様がエンターキーを押すと、何やらビデオカメラの映像のようなものが画面上に映し出された。
「これは」
 私が驚いていると、お師匠様は一仕事終えたかのように背もたれに体を預け、コーヒーを一口飲んだ。
「○コムもびくりですね」
「あ、まさに○コムだからな」
 二人で監視カメラの映像を眺めていると、お師匠が「チ」と舌打ちをした
「この男はやばいな。何かやろうとしている」
 野生の勘がそう言ているのだろうか。お師匠はたまにすごいことを言う。論理が飛躍しているのに、それが当たてたりする。今回もきとそんなことだろう。
「ここ結構近いだろう?ちと行て来いよ」
「え、今からですか?」
 さすがの無茶ぶりに私は拒否しようとしたが、お師匠様の威圧感がそうはさせなかた。私はしぶしぶお師匠様にしたがうことになた。
 仕方なく私はコートを羽織り、外出することになた。電車に乗て目的地へと向かう。
 電車を降りて、雑居ビルの立ち並ぶ繁華街を歩いていると、先の方に人だかりが出来ていた。
 近づいて見ると、人が死んでいる。
 警察もつい先ほど到着したようで現場の整理に忙しそうであた。
 私はお師匠様に電話をして、どうするか聞いてみた。
「お前身分証持てただろ?その中混ざえよ」
 お師匠様はそう言ていた。仕方がないので私はお師匠様の言うとおりにした。幸いコートを着てきたので刑事に見えなくもないだろう。雨も凌げて一石二鳥だ。
 私は恐る恐る警察手帳を見張りの警察官に見せ、中に入ることに成功した。バレるかと思たが意外とすんなり死体に近づくことができた。
 死体の脇腹にはナイフが刺さている。不思議なことにナイフはマクドナルドの紙袋越しに突き刺さている。つまり、ナイフの柄と被害者の衣服の間に紙袋が挟まている格好だ。
これはどういうことだろうか。おそらくナイフを持ち歩いていれば怪しまれる。要は目隠しに使たのだろう。私はそう推測した。
刺し傷の深さはまだナイフを抜いていないので刃渡りは分からないが、一撃で死んでいるということは結構深く刺さているかもしれない。内臓の損傷も深そうだ。
 目撃した男性が警察に事情を話している。男性は怯えた様子で話していた。話に聞き耳を立ててみると、どうやら、すれ違いざまに刺されたようである。
 通り魔の犯行だた。その男性の証言を聞けばすぐにわかることである。だが、問題は犯行を行た人物を特定することである。
 すれ違た男には見覚えが無いようであた。目立たない服装に、帽子とサングラスとマスクを着用していたようである。
 そこまでを聞いて私はピンときた。その人となりはまさにお師匠がハキングした監視カメラに写ていた男の姿そのものである。
 私はポンと膝を叩いた。そして、お師匠様の勘の良さにあきれるほど関心した。
 そしてその男はマクドナルドの監視カメラに映ていたじないか。私は携帯電話を取り出しお師匠様に連絡した。声を少し押し殺しながらお師匠様に状況を報告した。
「そうか。刺されていたのか」
 お師匠様は重苦しい声でそう言た。
「ですがお師匠様。ビンゴですよ」
「何がだ?」
「犯人の人相がお師匠様のハクした映像と一致してます」
「そうなのか」
 それを伝えても、お師匠様はあまり驚かなかた。ある程度は予想していたことなのだろうか。
「俺の勘は正しかてことだな。あ、お前、その近くでなんかもう一軒怪しい動きがあるからちと見に行てくれないか?」
「あやしい、動きですか?」
「あ。ラブホテルなんだが、男女二人で入た部屋があるんだが、女一人でしか出てきてないんだ。ちと、中に入て見てこいよ」
「ラ、ラブホテルに一人で、ですか」
「できなくもないだろ?」
 お師匠様に強弁されると私は何も反論できなかた。仕方なくお師匠様に従うことにした。
「は。わかりました」
 それに私はこの現場に長居するのも良くないと思い、お師匠様の言うとおり次の現場に移動することにした。
 確かに指定されたラブホテルの場所は先ほどの現場から歩いてすぐのところだた。
 私はピンク色に彩られたアーチをくぐり建物の中に入て行た。
 部屋を選択するボタンがついたパネルの前に立て私は連絡した。監視カメラの事ならおそらくお師匠様が細工しているから問題ないであろう。
 ホテルの管理人に気づかれないように素早く行動しなければならない。パネルを見ると、問題の部屋はまだ明かりが消えていた。つまり使用中ということだ。
 ホテルの管理側で気づいていないのだろうかと私は気になたが、おそらく女だけが途中で退出したのだろう。
 私は少し薄汚れたエレベーターに乗り、問題の部屋の前へと向かた。ドアに鍵が掛かていたので、見られないように周りに注意をしながらピキングをして中に入た。
 部屋に入てすぐのところにベドがあた。やはり、ベドの上には男が裸のまま倒れていた。
 おそらく行為中に殺されたのであろう。少し珍しいことだが、ありえなくもないことだ。
 私は近づいて死体を検分することにした。目立た外傷がないことから、絞殺か毒殺であるだろう。
 首元を見ると、微かであるが内出血をしている跡があた。まだ死体が暖かいので、死後間もないはずだ。空調が効いていて、室温が高いということもあるが、死後硬直が進んでいないということから、つい先ほど犯行が行われたということだろう。死体の顔は青ざめていた。
「どうだた?」
「やはり、死体がありました」
「そうか」
「犯行が行われて間もないですね」
「だろうな。女の姿はばちりカメラに写てるから、時間の問題かもな」
「どうします?」
「どうて、警察に任せとけよ。俺が通報しとくから、お前はささとそこ離れた方がいいぜ」
「わかりました」
 私は電話を切てその場を立ち去た。足跡の事だけが少し気になたが、後で靴を変えておくことにした。

 #
 私はお師匠様の元へ戻た。お師匠様は安楽椅子に腰かけて何か物憂げに空中を見つめていた。
「おう。お疲れだたな」
 私が近づくと、それに気づいたお師匠様が労いの声を掛けてくれた。
「はい。それで、今回の一件はどうするんです?」
「早速だな。ま、いつも通りだよ」
「となると、売るんですか」
「つてもなあ。あまり買い手なんて見つからないんだよ。ほとんど闇取引だぜこり
「ですよね」
「ま、考えておくけどな」
「警察にでも送ときます?」
「うん。あんまり俺たちの存在は明るみに出したくないからな。ま、匿名で送ればいいかもしれないが」
「そうですね」
「あ、そういえば、あの自殺の件だたんだがな、どうやら偽装の可能性が出てきた」
「そ、そうなんですか?」
「あ。死亡が推定される日の監視カメラにどうやら謎の男の姿が映ているんだ」
「それは・・・」
「普通はありえないだろ?」
「そうですね」
「その男は、どうやら自殺が行われた部屋に出入りした形跡がある。まさか、自殺を見物して帰て行たわけではないだろう」
「となると、その男が手を下した可能性がある」
「ま。そういうことになるな」
 それからお師匠は「いずれにしろ時間の問題だろう」と言て、パソコンの画面に向き直てしまた。
 私は事の大きさに驚きながら、再びコーヒーを淹れる作業に戻た。あと何回お師匠様にこき使われるのだろうと思いながら。
 結局、得られた情報は全て警察に匿名で送付された。郵便の消印をごまかすためにわざわざ少し離れた街まで行たのはいい思い出である。
 どこかの監視カメラにジンキーが浮浪しているのが映ていたのが心配になたが「放ておけ」と言われたので放ておいた。
 今頃何をしているだろうか。それからあの住居侵入の浮浪者も。私も早々に身を隠さなければ。
 だが、お師匠がそんなこと許さなそうだ。こうして世の中を監視していると割と変な人に出くわすが、監視している方も割合変人である。
 アノニマス。そんな言葉が頭に浮かんだが、それもどうでもよかた。
 今日も街のどこかでサイレンが鳴り響いている。
← 前の作品へ
次の作品へ →
5 投票しない