てきすとぽい
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【BNSK】月末品評会 inてきすとぽい
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ブツ
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.03.30 23:13
字数 : 2330
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ブツ
茶屋
「持
っ
てきたか」
「ああ、ここに」
俺は手に持
っ
たブリー
フケー
スを見せてやる。
「確かだろうな」
「ああ、確かだ」
正直なところ何が確かなのか俺は知らない。
き
っ
と中身は確かに本物なのかと問うているのだろうが、それが何なのか知らない。
ただ、指定された場所に行
っ
て、指定された額を受けとればいいだけだ。
知る必要もない。
厄介ごとには首を突
っ
込む主義じ
ゃ
ない。
「そ
っ
ちもち
ゃ
んと用意してるんだろうな」
俺はさ
っ
さと取引を終わらせて飲みに行きたいんだ。緊張で喉が渇いた時ほどビー
ルがうまい。
「ああ」
相手の男はパチンパチンと軽快な音を鳴らすと、銀色のアタ
ッ
シ
ュ
ケー
スを開けて見せる。
毎度のことながらハリウ
ッ
ド映画でも見ている気分だ。
ピン札が整然と敷き詰められている。
「フクザワダラー
か、気が利くな」
「大事な品だからな」
一束と
っ
てざ
っ
と枚数を数え、頭の中で敷き詰められた金額を計算する。
そして金額が算出された瞬間、血の気が引く。
「足りないぞ」
何かの手違いかとも思
っ
たが、そんなことあるはずがない。
「前金だ」
「ふざけるな。一括のはずだぞ」
男は呆れたように首を振る。
「こ
っ
ちも完全に信用してるわけじ
ゃ
ないんでな」
「そうか、じ
ゃ
あ、交渉は決裂だ」
あくまで事務的に言い放つ。内心動揺しているが表情に出すわけにはいかない。
「お
っ
と、そういうわけにはいかないな」
男は自然な動作で銃を抜き、こちらに向けてきた。
「お前がその金を受け取る。俺にそのケー
スを渡す。それだけのことだろ?簡単じ
ゃ
ないか」
「そうかな?」
「安心しろ。後から残りの半分も渡すさ。こ
っ
ちだ
っ
てお前の命なんて欲しくないんでね」
まずい状況だ。
だが、相手に有利な状況を作り出されつつある。こ
っ
ちは一人バ
ッ
クア
ッ
プはない。
その時、ガタ
っ
と大きな音が鳴
っ
た。
ブリー
フケー
スからだ。
「なんだ!?」
男の動揺が見えた。チ
ャ
ンスだ。
「そり
ゃ
、中身に決ま
っ
てんだろ」
「中身?」
「おいおい。まさか中身も知らないでここに来たのか?」
「ば、馬鹿な。そ、そうだな。中身だな」
かか
っ
た。どうやら本当に中身のことを知らないらしい。
それはこちらも同じだが。
「確認しなくていいのか?中身を」
「確認か。それもそうだな。だが、お前に背を向けるわけにもいかないしな」
「何だ?俺を信用してるのか?銃まで持
っ
てきたくせに」
相手の目が泳いでいる。どうにも中身のことが気になるようだ。気になるが、確かめようがない。むしろ確かめることは避けたいだろう。中身を確かめずに受け取
っ
てくることを指示されたに違いない。あるいは中身を見るなとすら言われているかもしれない。
「だ
っ
たら、俺が開けてやろうか?それだ
っ
たらお前が俺に銃を突きつけたまま、中身を確認できる」
「そうだな。それがいい」
「よし、じ
ゃ
あ」
「待て!お前、その中身を使
っ
て俺に反撃しようとしてるんじ
ゃ
ないのか?」
反撃?中身を使
っ
て?
反撃
っ
てどうや
っ
て。いや、中身が武器であれば確かに反撃に使えるかもしれない。
だが、俺は中身を知らない。
そしておそらくそれは相手だ
っ
て同じだ。
「じ
ゃ
あ、どうする?試験でもするか?」
「試験?」
「そり
ゃ
そうだ、中身が本物だ
っ
たら試験すり
ゃ
一発でわかるだろ」
「どうするんだ?」
「おいおい本当に中身のこと知
っ
てるのか?試験なんて常識だろ」
「いや、常識がないものでな。そんな試験知らんな」
くそ、墓穴を掘
っ
た。どうする。試験なんてただので
っ
ち上げだ。
どうすり
ゃ
いい。
ガタガタ
ッ
。
タイミングよく、またケー
スが動いた。
「まあ、テストするまでもないか」
「そ、そうみたいだな」
明らかに相手は動揺している。中身を何も知らずにケー
スがやたら動いているわけだから。
俺も少なからずびび
っ
てはいるわけだが。
「生きてるのか」
「は?」
「中身は生きてるのか」
ここに来て相手は中身を知らないことを認めたのか?
いや、違う。探
っ
ているのだろう。
こちらが生きている、もしくは死んでいるはずだといえば中身は何か生き物。
こちらが訝しげな表情をすれば、比喩的な意味で言
っ
たのだとはぐらかすこともできる。
「さあな。どう思う?」
「答えたくないのか?本当に中身は確かなんだろうな?」
薄々とこちらも中身を知らないことを感づいているかもしれない。
交渉はほぼ敗北に近い状況だ。
仕方がない。
ゲー
ムは負けだ。
「持
っ
て行けよ。正直俺も中身を知らないんだ。確かめようがない。だが、お前もそれは同じなんだろ?だから前金はもら
っ
ていく」
「ふん。最初からそうしていればいい」
そもそも厄介ごとに首を突
っ
込む主義じ
ゃ
ない。
「取引終了だな」
そうい
っ
た瞬間ケー
スが激しく音を立て振動する。
「何だ!?い
っ
たい何なんだ!?」
ガタガタガタガタガタガタガタ。
俺は静かに目を瞑り、し
ゃ
がみ込む。
厄介ごとには巻き込まれたくない。
ただ、黙
っ
て目を瞑り、耳を塞ぎ、口を閉じる。
銃声が聞こえたような気がした。
「毎度のことながらき
っ
たね
ぇ
」
俺は血だらけにな
っ
たケー
スの取
っ
手をとると
っ
て周辺を見る。
血だらけだ。これでもか
っ
て程に真
っ
赤だ。
食い散らかすにしてもやりすぎだ。
「お
っ
と、忘れち
ゃ
いけね
ぇ
な」
銀色のアタ
ッ
シ
ュ
ケー
スもし
っ
かり持
っ
ていく。予定の半分だが、仕方ない。
服も血まみれだ。
バー
に行く前にどこかで着替えてシ
ャ
ワー
でも浴びなくち
ゃ
いけない。
面倒な話だが、仕方がない。
ガシ
ャ
ンと何かが落ちる音がした。
見れば相手の持
っ
ていた拳銃だ。
ケー
スの中身が吐き出したらしい。
食えなか
っ
たらしい。
俺はこの中身がどんなものなのか知らない。
何故誰かが欲しがり、交渉を持ちかけてくるのかも。
もしかしたら、何かの分泌物を出して獲物を誘い出しているのかもしれないが、正直知りたくもない。
ただ、金さえ手に入ればそれでいいんだ。
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