てきすとぽい
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第16回 てきすとぽい杯
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四角い切符
(
三和すい
)
投稿時刻 : 2014.04.06 00:26
字数 : 907
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四角い切符
三和すい
遅くな
っ
たので、帰りは彼の車で送
っ
てもら
っ
た。
彼とのドライブは以前は楽しいものだ
っ
た。短い時間でもいろいろな話をして笑
っ
たりした。
でも、今夜は私も彼も無言のまま。私が座
っ
ているのも助手席ではなく後部座席だ。
原因はハ
ッ
キリしている。
私と彼の結婚を、どちらの両親からも反対されているからだ。半年以上前から説得しようと努力しているが、状況はまるでかわらない。
そのことに、私も、彼も、疲れていた。
二人で会
っ
ても、どうしてもお互いの両親の話になり楽しめない。ケンカも増えた。笑
っ
て「ごめんね」と謝ることすらできなくな
っ
た。
そして今夜、
「俺たち、どうしようか」
そんな言葉が彼の口からこぼれた。
つまり、このまま結婚せずに付き合うか。
それとも、別れるか。
返事ができないまま終電の時間が過ぎ、私は彼の車に乗せられて自分の家に向か
っ
ている。
彼は何も言わない。
私も何も言えない。
何も考えたくなくて窓の外ばかり見ていたけれど、車は止まらない。
見慣れた町並みが近づいてくる。
やがて車が止ま
っ
た。私の家が少し先に見える。歩けば数分の距離。雨も降
っ
ていない。
だけど、私は彼の車から降りたくなか
っ
た。
降りてしまうと、すべてが終わ
っ
てしまうような気がした。
なかなか降りない私に「お客さん、終点ですよ」と、彼が冗談
っ
ぽく言う。
けれど、私は笑えない。首を何度も横に振る。
「イヤよ。このまま乗
っ
てる」
「終点
っ
て言
っ
ただろう」
「終電じ
ゃ
ないんでし
ょ
? だ
っ
たら、また出発するわよね? それまで乗
っ
てる」
「
……
追加料金が必要だぞ」
「じ
ゃ
あ代金は私自身で」
私の子供じみた答えに、彼が大きくため息をつく。
嫌われたかと心配にな
っ
た時、
「手、出して」
素
っ
気ない彼の言葉に恐る恐る手を出すと、
「はい、切符」
四角い小さな箱が私の手のひらに乗せられた。やけに立派なその箱の中に何が入
っ
ているのか、見なくてもすぐにわか
っ
た。
信じられない気持ちで顔を上げると、彼が真剣な表情で言
っ
た。
「ここからの道のりは険しいが、それでもいいか?」
「あなたは?」
「お前が側にいてくれるなら頑張れる。お前は?」
「あなたが一緒なら大丈夫」
「それなら出発だ!」
私を乗せたまま、彼は車のエンジンをかけた。
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