第二回 てきすとぽい杯〈てきすとぽい始動一周年記念〉
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フライト・フレア
投稿時刻 : 2013.02.16 23:36 最終更新 : 2013.02.16 23:43
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- 2013/02/16 23:43:02
- 2013/02/16 23:36:46
フライト・フレア
げん@姐さん


「お客様の中に医療従事者の方はいらいませんか」
そんな台詞が聞こえてきたのは、離陸からほどなくして飲み物がサービスされている頃だた。
乗客の中からは言うが早いがちらほらと手が上がており、客室乗務員が「こちらへ」と前方へ誘導している。
しかし…何かがおかしい。
急病人であれば、医師を探すだろう。
医療従事者は医師だけではない。
医師、歯科医師、看護師、助産師、薬剤師、放射線技師、理学療法士、作業療法士…挙げればキリがない。
広く捉えれば医療事務も、病院の清掃員も医療従事者だろう。
はて、医療従事者とはいかに。
首を傾げながらも、自らも医療従事者だと挙手する人が跡を絶たない。
離陸時はほぼ満席に近かたエコノミークラスに、空席が目立ちはじめた。

と、先ほどアナウンスした客室乗務員が挙手した乗客を案内し終えたのか戻てきた。
そして「お騒がせいたしました。ご協力ありがとうございました。」と言い、何事もなかたかのように飲み物のサーブを再開した。
非日常の緊張にさらされていた客席にも、ほとした空気が流れはじめた。
…実は、他でもない私も医療従事者の端くれなのだが、こうなると完全に出遅れてしまた。
今さら私もですとは言えない。
少々の罪悪感は覚えたが、あんなに大勢の医療従事者が集またのだ。十分すぎるくらいだろう。
そう結論づけて後ろめたさをサーブされたホトコーヒーで流し込み、寝てしまた。

「お客様、お客様、起きてください」
遠慮がちな声に意識が浮上する。
意外と近い場所に、さきの客室乗務員の顔があた。
もう着陸かと思いきや、まだそんな時間ではないことに気づく。
若干むとして無言で睨むと、彼女は申し訳なさそうに言た。
「お嬢様がお呼びなのです。いらしてください」
…お嬢様?
意味が分からなかたが、寝起きで判断力が低下していたのか意義を唱える前に立ていた。
そしてふと目に入た景色にぎとした。
乗客が一人も居ないのだ。
一体何が起こたのだ。

改めて客室乗務員の顔を見るが、彼女は絶対に目を合わせようとしない。
「お客様。わたくしを助けると思て。どうか今すぐにでも」
何時の間にか周りを客室乗務員たちに囲まれており、半ば押されるように歩き出した。
エコノミークラスにあれだけいた乗客は一体どこに消えたのか。恐怖で足がもつれる。
ビジネスクラスにさしかかる頃、やと人の気配を感じ、ほとした。
が、このビジネスクラス、見渡す限り女性である。何かのツアーだろうか。
客室乗務員はそこも足早に通り過ぎると、フストクラスへ私を誘た。
「こちらにお嬢様がいらいます」

恐る恐る中に入ると、一人の女性が座ていた。
私の顔を見るなり、その顔がぱと花が綻ぶように輝いた。
「あと会えた‼」
「空港であなたを見かけて一目惚れだたの‼
急遽この便のフストとビジネスは買取たんだけど、エコノミーは無理で…
いきなり直接話すなんて恥ずかしいじない?
預けたスーツケースの中に白衣と医学書が入てたから医療従事者だと思て。
それで呼ばせたのに、あなた全然来ないんだもん。
くる人くる人みーんな外れで疲れちた。
女のひとは全員おわびにビジネスにうつてもらて…
あなたに会うためにわたしがどれだけ努力したか分かる?
あなたをこんなに好きなのて世界でわたしだけだと思う。
そんなわたしをあなたも当然好きよね?わたしたち両思いだわ」

一気にまくしたてられ、思考が追いつかない。
スーツケース、開けた?
客席を買取た?
エコノミーにいた乗客のうち、女性はビジネスクラスへ
では男性は…?

そして、先ほどから感じるこの匂い。
職場でたまに感じる匂いだ。そう、血の匂い。
むせるような薔薇の香りに、微かに血の匂いが交じる。
その匂いを纏い、微笑む彼女は壮絶なまでに美しい。
赤なルーをひいたくちびるが言葉を紡ぐ
「さ参りましう? 旦那様」

、もうすぐ着陸か。
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