てきすとぽい
X
(Twitter)
で
ログイン
X
で
シェア
第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
〔
1
〕
〔
2
〕
«
〔 作品3 〕
»
〔
4
〕
〔
5
〕
…
〔
49
〕
紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが
(
なんじや・それ太郎
)
投稿時刻 : 2014.05.03 23:23
字数 : 1379
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票
紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが
なんじや・それ太郎
芥川賞を受賞したので、も
っ
と引
っ
張りだこになるかと思いきや、ブログやツイ
ッ
ター
で馬鹿なことばかり書いていることがバレてしまい、桜を見る会や園遊会には呼ばれずじまいだ
っ
た。それでも、アイドル好きを隠さなか
っ
たことが功を奏したのか、年末の紅白には特別審査員として招かれることとな
っ
た。「森保まどかがHKTを卒業するまで、ボクも恋愛禁止です!」などとGoogle+に書いたりしたのだが、求愛とは受け止められず、単なる冗談だと理解されたようなのである。俺みたいな危険人物を森保まどかの半径100m以内に接近遭遇させるとは、NHKもいい度胸だ。そんなことを思いながら、審査員席の片隅に陣取る。右には女優の北川景子が、そして左には横綱・鶴竜がいる。美人とデブに挟まれたチビの太
っ
たお
っ
さんである俺は、幽霊屋敷から直行したかのような魔女のコスプレで登場し、かなり目立
っ
ている。
「高山さん、その格好は?」と紅組キ
ャ
プテンの指原莉乃が訊くので、俺は機嫌よく
「プチMなので、マゾ(魔女)の格好で来ました」とボケてみた。
おや? 何だ、この会場の雰囲気は
……
。
指原莉乃は俺の返事もろくに聞かず、あらぬ方向を向いている。完全なシカトだ。困
っ
たもんだ。こんなことになるくらいなら、紅組キ
ャ
プテンなんて、綾瀬はるかに続投させればよか
っ
たのだ。
しかし、俺がすべ
っ
ただけにしては、様子がおかしい。スタ
ッ
フも駆け回
っ
ている。ただならぬ気配を察した俺が、
「あのう
……
」と口を開きかけた時、
「どなたかお客様の中に、東李苑の代役としてEscapeのキー
ボー
ドを演奏できる方はいら
っ
し
ゃ
いませんか?」と指原が切羽詰
っ
た表情で会場に問いかけた。
三秒ほど待
っ
たが、会場はざわめくばかりで手を挙げる者がいない。仕方なく、俺が手を挙げた。しかし、審査員である以上、SKE48としてステー
ジに立つわけにはいくまい。どうせ、却下されるだろう。
ところが、である。
「じ
ゃ
あ、お願いします」とスタ
ッ
フに促され、俺はステー
ジに向か
っ
た。
「あのう、審査は?」
「そんなの、どうでもいいです」
どうでもいいのか? まあ、そうだろうけど。
俺は中途半端なのは嫌いなので、コスプレにも気合が入
っ
ている。スカー
トを穿いたのは当然のこと、股の間には空飛ぶ箒がし
っ
かり挟んである。とい
っ
ても、この箒の柄には小さな穴が開いており、その小さな穴には俺の小さなナニが突
っ
込まれているのだ。そう、俺は加齢のせいもあ
っ
て小便が近く、紅白の長丁場には耐えられない。そこで工夫を凝らし、こうして特殊なおまるを製作して持参したというわけだ。
股の間の箒をぶらぶらさせながら、階段を上り、キー
ボー
ドの前に立つ。そして、俺の指が奏でるヴ
ィ
ヴ
ァ
ー
チ
ェ
を合図に、SKE48の「Escape」は始ま
っ
た。激しく踊るSKE48の後ろで、股間の箒を揺らしながら乗りに乗
っ
てキー
ボー
ドを演奏する俺。俺はセ
ッ
クスと掃除は苦手だが、言い訳と楽器の演奏だけはプロ級なのだ。
そして、演奏は終わ
っ
た。観客の悲鳴にも似た叫びに俺たちは包まれる。感動的な一瞬だ。汗はび
っ
し
ょ
りだが、この達成感が心地いい。みんなに手を振
っ
て、おじぎをする俺。
だが、おじぎをした俺が見たのは、自分の足元に落ちた箒だ
っ
た。これでスカー
トがずれ落ちたりでもしていたら洒落にならん、と思いつつ、俺は自分の腰に手をや
っ
た。
←
前の作品へ
次の作品へ
→
1
2
3
4
5
投票しない
感想:1
ログインして投票