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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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幽霊屋敷の浴室
 投稿時刻 : 2014.05.06 23:44
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幽霊屋敷の浴室
山田佳江


 幽霊屋敷というとだれもが頭に思い描くような、そういたいわゆる古い洋館で、僕とおばあちんは向い合て夕食をとていた。
 ここはずいぶんと昔に栄えた港町で、古い建物がいくつも残されている。おばあちんの住む家も、そのうちの一つだ。
「日記は書けたの?」
「5月4日と、5月5日の分は書けたよ。今日の分はまだ」
 ポテトサラダを小皿に取り分けながら、おばあちんは静かな声で僕に尋ねる。
 連休中に小学校から出されたのは『ゴールデンウクのできごとを日記に書く』という宿題だた。

 5月4日(くもり)
 おとうさんとおかあさんは仕事を休めないので、おばあちんのうちに泊まりにきました。
 5月5日(雨)
 おばあちんが、がめの葉もちを作てくれました。かしわの葉でつつむのがかしわもちだけど、この地方では、がめの葉でつつむのだとおばあちんが教えてくれました。

 そんな感じで、僕の日記はたいしたイベントも無く連休を終えようとしている。
 僕はこの家のことが嫌いではなかた。くすんだ壁紙の模様も、分厚く重いカーテンも、ひんやりと湿ぽい匂いも、好ましく思う。気に入らないのは簡易水洗のトイレが流れにくいことくらいだ。
「今日の日記に書くことが無いのね」
「ポテトサラダのことを書くよ。おばあちんの作るポテトサラダにはみかんの缶詰が入ています。て」
 僕は箸でみかんを皿の端に寄せて、ポテトサラダを食べる。そんな僕を見て、おばあちんは上品に微笑む。
「浴室のタイルを見てみなさい」
「タイル?」

 静かな昼食を終えて、僕は浴室を覗いてみる。バスタブの水は抜かれ、綺麗に掃除されていた。古い浴室のタイルは一枚一枚が教科書くらいの大きなもので、いくつかひび割れているものもある。修理しようにも、これほど大きなタイルはあまり手に入らないのだと、おばあちんは言ていた。
「これ、なんだろう……
 茶色いマーブル模様のタイルに、昨日は気づかなかた印がつけられている。右上の隅に、数字の『2』を横にしたような文字。
 僕は浴室の中を見渡す。よく見ると、隅に数字の書かれたタイルがいくつもある。その数字は縦になたりよこになたりしているけれど。
 シンプーや石鹸の置かれている棚を移動させる。『9』と記されたタイルがそこにある。マーブル模様の中央に、大金でも入ていそうな布袋のイラストが描かれている。

「おばあちん、カメラある!?」
 リビングに駆け込む僕に、おばあちんはポラロイドカメラを差し出す。最初から用意されていたみたいだた。
 僕は大急ぎで写真を撮る。もうすぐ父と母が迎えに来るのだ。
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