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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが
 投稿時刻 : 2014.05.03 23:23
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紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが
ひこ・ひこたろう


 芥川賞を受賞したので、もと引張りだこになるかと思いきや、ブログやツイターで馬鹿なことばかり書いていることがバレてしまい、桜を見る会や園遊会には呼ばれずじまいだた。それでも、アイドル好きを隠さなかたことが功を奏したのか、年末の紅白には特別審査員として招かれることとなた。「森保まどかがHKTを卒業するまで、ボクも恋愛禁止です!」などとGoogle+に書いたりしたのだが、求愛とは受け止められず、単なる冗談だと理解されたようなのである。俺みたいな危険人物を森保まどかの半径100m以内に接近遭遇させるとは、NHKもいい度胸だ。そんなことを思いながら、審査員席の片隅に陣取る。右には女優の北川景子が、そして左には横綱・鶴竜がいる。美人とデブに挟まれたチビの太たおさんである俺は、幽霊屋敷から直行したかのような魔女のコスプレで登場し、かなり目立ている。
「高山さん、その格好は?」と紅組キプテンの指原莉乃が訊くので、俺は機嫌よく
「プチMなので、マゾ(魔女)の格好で来ました」とボケてみた。

 おや? 何だ、この会場の雰囲気は……

 指原莉乃は俺の返事もろくに聞かず、あらぬ方向を向いている。完全なシカトだ。困たもんだ。こんなことになるくらいなら、紅組キプテンなんて、綾瀬はるかに続投させればよかたのだ。
 しかし、俺がすべただけにしては、様子がおかしい。スタフも駆け回ている。ただならぬ気配を察した俺が、
「あのう……」と口を開きかけた時、
「どなたかお客様の中に、東李苑の代役としてEscapeのキーボードを演奏できる方はいらいませんか?」と指原が切羽詰た表情で会場に問いかけた。
 三秒ほど待たが、会場はざわめくばかりで手を挙げる者がいない。仕方なく、俺が手を挙げた。しかし、審査員である以上、SKE48としてステージに立つわけにはいくまい。どうせ、却下されるだろう。
 ところが、である。
「じあ、お願いします」とスタフに促され、俺はステージに向かた。
「あのう、審査は?」
「そんなの、どうでもいいです」
 どうでもいいのか? まあ、そうだろうけど。

 俺は中途半端なのは嫌いなので、コスプレにも気合が入ている。スカートを穿いたのは当然のこと、股の間には空飛ぶ箒がしかり挟んである。といても、この箒の柄には小さな穴が開いており、その小さな穴には俺の小さなナニが突込まれているのだ。そう、俺は加齢のせいもあて小便が近く、紅白の長丁場には耐えられない。そこで工夫を凝らし、こうして特殊なおまるを製作して持参したというわけだ。
 股の間の箒をぶらぶらさせながら、階段を上り、キーボードの前に立つ。そして、俺の指が奏でるヴを合図に、SKE48の「Escape」は始また。激しく踊るSKE48の後ろで、股間の箒を揺らしながら乗りに乗てキーボードを演奏する俺。俺はセクスと掃除は苦手だが、言い訳と楽器の演奏だけはプロ級なのだ。
 そして、演奏は終わた。観客の悲鳴にも似た叫びに俺たちは包まれる。感動的な一瞬だ。汗はびりだが、この達成感が心地いい。みんなに手を振て、おじぎをする俺。
 だが、おじぎをした俺が見たのは、自分の足元に落ちた箒だた。これでスカートがずれ落ちたりでもしていたら洒落にならん、と思いつつ、俺は自分の腰に手をやた。
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