てきすとぽい
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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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せやせや
(
せせせ
)
投稿時刻 : 2014.05.06 23:44
字数 : 1927
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せやせや
せせせ
せやな、というのは便利な言葉だ。反応に困
っ
た時、図星を突かれた時、猫が可愛い時、この言葉を使えば簡単に場を切り抜けることが可能だからだ。
そう思わない?
「せやな」
またせやなで返された。こいつはせやな、しか言えないのか。せやな、というのは卑怯な言葉だ。反応に困らせても、図星を突いても、猫が可愛くても、この言葉を使われたら相手に簡単に場を切り抜けられてしまうからだ。
「さ
っ
きまでせやな褒めてたのに何で唐突にせやなデ
ィ
ス
っ
てるの」
せ
っ
、せやな。
でもお兄さん仕方ないと思う。だ
っ
てせやな
っ
て便利すぎるんだもん。便利だよね、せやな。反応に困る時、以下略。
「俺にと
っ
てはまさに今が反応に困る時だけどな」
いかにも困
っ
た表情で言うな。
「何で幽霊屋敷で幽霊とせやな談義してるんだ」
……
せ、せやな。
ご存知の通りここは幽霊屋敷だ。そして僕もまた幽霊である。その事実は認めよう。でも、でもさ、幽霊だ
っ
てたまにはせやな談義したくなるもんじ
ゃ
ん?
「せやろか
……
」
せやで。幽霊だ
っ
てせやな談義したくなるんやで! この地下室で死んで幾千年、千年も生きてないけど、ず
っ
と暇だ
っ
たんだよ? 暇で暇で死にそうにな
っ
てたんだよ? か
っ
こ古典的表現。幾年の時を一人○×ゲー
ムで潰しただろうか。でも、ついに! ついに話し相手が現れてくれた! これで思う存分せやな談義が出来る!
「せやな談義しかすることないの
……
」
…………
せやな。お兄さんせやな談義しかすること無い。だ
っ
てそれ以外に話題無いし
……
。最近の流行とか、ず
っ
と地下に篭
っ
てたから何も分からないし
……
。
「せやか
……
」
せやで
……
。
……
あ
っ
、そうだ、せ
っ
かく僕に会いに来てくれたんだから芸でも見せてあげるよ。嬉しいだろ? 嬉しい
っ
て言え。呪い殺すぞ。
「せやな」
一番! 僕! 幽体離脱します!
「あ、予想ついたからやらなくていいです」
えー
なんで。予想つけるなボケ。祝い殺すぞ?
「そんなに古くもないけど、でも確実に古いからち
ょ
っ
と反応に困りますね」
すぐ反応に困るなこいつ。まあいいや、でもお兄さん急に君が来たからび
っ
くりしち
ゃ
っ
た。せ
っ
かく幽霊にな
っ
たんだし、どうせならあたまはみぎ、からだはひだり、次は本庄早稲田、お前の母ち
ゃ
んカー
ムフレ
ッ
クス! とかや
っ
て驚かせたか
っ
たのに。
「意味が分からない」
それで、どうして君はここに来たの? ち
ょ
っ
とここは関係者以外立ち入り禁止なんだけど。出待ちとかされたら困るんだけど。あ
っ
い
っ
けね、幽霊だからすぐに考えてることが飛んでい
っ
てしまう。幽霊だけに! 上手いこと言
っ
てしま
っ
た。僕を讃え敬え!
「せ、せやな。いや、だ
っ
て、先輩が、ここの地下室に大金が眠
っ
てるらしい
っ
て」
あー
。そういう噂あるよね。僕の子供の頃もあ
っ
たよ。あの頃は若か
っ
た。今では私はお兄さん。あげられるものは無いから呪うね。まあでも僕が死んだのも君と同い年ぐらいの時だ
っ
たんだけどね。
「え
っ
」
懐かしいな
ぁ
、そういや僕もそんなこと言われてこの幽霊屋敷に忍び込んだんだ
っ
けな
ぁ
。確かある日突然、大宇宙幹総統からの電波が僕に、近所の幽霊屋敷の地下室に忍び込んで来い
っ
て指示を出してきたんだ
っ
けな
ぁ
……
。懐かしい。
「え、だい、いやそんなことはどうでもいい、まさか」
でもあ
っ
たのは何の変哲も無い木箱の山だけ。ただの倉庫だ
っ
たんだよね。でも、扉が外からしか開けられなあ
ッ
「
……
あ、え、え、ち
ょ
、俺」
…………
。飴ち
ゃ
ん食べる?
「
……
」
……
! 死んでる
……
。
「死んでね
ぇ
よ! え、マジかよ、クソ、は? え? 閉じ込められてんの俺? おい、は、クソ
ッ
、おい、開けよ!」
おお、男の子がドアをガンガン蹴る殴るしている。でも多分それ意味無いと思うな
ぁ
、だ
っ
てそのドア、アコスター
クロスウ
ォ
ー
ルで出来てるもん。何だよアコスター
クロスウ
ォ
ー
ル
っ
て。防音材だよ。映画館かよ。
僕も同じことを何度もや
っ
たよ。でも、ついには出られなか
っ
たんだ。その結果が海の藻屑です。海じ
ゃ
ないね。藻屑でもないね。言わば土の木屑ですよ
……
。
「
っ
、そうだ、携帯
…………
嘘だろ
……
。じ
ゃ
あ、俺、一生、このまま、?」
そうだよー
。一生というか、なんというか、まあ、
……
短い一生だ
っ
たね。後先少ない人生だけど、老後の楽しみでも見つけなよ。閉じ込められ後の楽しみか。例えばせやな談義とか。せやか談義でも可。
「
…………
はは
……
」
鈍い笑みを漏らした
っ
てどうや
っ
た
っ
て無理なものは無理ですよ。笑うだけで救いが来るんなら大笑いしとるわ。でも地下室で高笑いとか怖いじ
ゃ
ん?
うん。
まあ、ご愁傷様、というか
……
。まだ死んでないけど。
「
……
」
でも安心しなよ。
僕の時はず
っ
と一人
っ
きりだ
っ
たけど、今度は二人だから多分暇しないよ。
「
…………
せやな」
……
。
せやで。
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