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第17回 てきすとぽい杯〈GW特別編〉
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幽霊空き家
 投稿時刻 : 2014.05.03 23:30
 字数 : 905
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幽霊空き家
永坂暖日


 その家を取り囲む生け垣はすかり枯れて、水気のない枝になていた。生け垣よりも背の低かた時分はまだ青々としていて、その向こうの様子を覗き見ることはかなわなかたけれど、今は生け垣より背が高くなたのと枯れてしまたのもあて、かつて見えなかたものが見えるようになていた。
 そこにあるのは、なんの変哲もない普通の家だた。ただ、人が住んでいる気配はない。外界との接触を拒むように雨戸はすべて閉ざされて、さして広くない庭は、枯れた生け垣とは対照的に雑草が生い茂り、猫が気持ちよさそうにひなたぼこしているときもあた。
 買い手のつかない空き家なのだろう。家は長いことその状態で、猫たちのかこうの昼寝場所となていた。だけど枯れた生け垣はやんちな子供たちの侵入を許さなかたようで、荒れた庭は猫たちの場所でありつづけた。
 そんな空き家が「幽霊屋敷」と呼ばれるようになたのはいつからだろう。近所の人たちはまことしやかに、あそこは幽霊屋敷だから近づかない方がよい、と口にするようになた。
 屋敷と呼ぶほどの大きさではない、というのが初めて噂を耳にしたときに抱いた感想だたものの、「幽霊空き家」というのはいかにも間の抜けた印象なので、やはり「幽霊屋敷」と呼ぶのがふさわしいのだろう。
 ただ、「幽霊屋敷」で起こたとされる怪異は、空き家にふさわしい他愛もないものだた。
 すべて閉ざされているはずの雨戸が、一カ所だけ開いている。
 それだけである。
 開いているのは、二階の北側の窓のこともあれば、一階の西側のこともある。しかし開いているのは必ず一カ所だけで、開くところ閉まるところを見た人はおろか、そのときたつであろう物音を聞いた人もいなかた。
 誰かが住み着いているのではないか、という憶測が当然ながらされたものの確かめようと乗り込む物好きはなく、荒れた庭は変わらず猫たちの場所でありつづけた。
 今日は、一階の南側の雨戸が開いていた。昼間だというのに、開いた窓の向こう側は真暗である。昨日は、二階の東側が開いていた。
 明日はどこの雨戸が開くのだろう。
 庭に忍び込むのを諦めた子供たちは、今はその予想をするという遊びをしているらしい。
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