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第一回 クオリティスターター検定
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呪 (じゅ)
(
住谷 ねこ
)
投稿時刻 : 2014.06.17 10:11
字数 : 1109
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呪 (じゅ)
住谷 ねこ
2年前、日本中がその冬一番の寒波に襲われた日
新谷さんが亡くな
っ
た。
金曜日の朝 10時頃 仕事場に行くと
所長である日森さんがバタバタと着替えをしていて
「あー
高島さん あなたも一緒に来て
今日の予定は違う人に行
っ
てもらうから
……
新谷さんが亡くな
っ
たの」
「いつ? いつですか?
おとといは だ
っ
て 元気で
私、いつもどおり だ
っ
て…」
「今朝なのよ。今朝連絡があ
っ
たの
あー
でも亡くな
っ
たのは昨日の夜らしいの
夜中に大きな音がしたからその時じ
ゃ
ないか
っ
て
トイレで倒れてた
っ
て 隣の部屋の人が朝区役所に連絡したんだ
っ
て」
新谷さんの壁の薄いアパー
トのことを思
っ
た。
誰も身寄りのない新谷さんは区が保証人にな
っ
て
借り上げているプレハブみたいなアパー
トで一人暮らしをしていた。
そして、私が働いていた介護施設の
デイ・サー
ビスを受けていて
私は毎週水曜日 新谷さんの担当で
午前11時から午後3時まで
掃除や洗濯をし、新谷さんに頼まれた買い物をする。
そういう事をしていた。
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どうして急にそんなことを思い出したかというと
テレビのニ
ュ
ー
スに「斉藤久遠(さいとう くおん)」と名前が出て
それに少し記憶があ
っ
たのだ。
ずいぶんたつのに忘れずにいたのは名前が珍しいのもあるが
それにまつわる話がち
ょ
っ
と特異でもあ
っ
たからだ。
新谷さんとはよくいろんな話をした。
手伝いに行くとこれでもかと用事をてんこ盛りにする人も
少なくない中、「私が欲しいのは話相手なのよ」
そうい
っ
て 掃除も洗濯も自分で出来るからと
まず 「そこに座
っ
て、いいから座
っ
て」 そう言うのだ
っ
た。
いろんな話をしたとは言
っ
ても新谷さんの人生は
特別、波乱に満ちていたわけではない。
普通に短大を出て、普通に就職し、結婚し
……
ただ子供は出来なか
っ
たそうだ。
ち
ょ
っ
と変わ
っ
ているといえば占いが得意だ
っ
たことくらい。
手相もタロ
ッ
トもやるけど占星術が一番当たるとい
っ
ていた。
星占いなんていうと女性雑誌のうしろにの
っ
ている
今週の運勢みたいなのを思い浮かべて
12種類しかない運勢なんて、そんなの当たらない。
と思うかもしれないけど 本当の星占いは違う。
本当はひとりひとり、生まれた年や、月や日にち、時間
そういうものでみんな違う運勢がある。
そう言
っ
ていた。
でも新谷さんは保母さんだ
っ
た。
結婚してからも仕事を続けていた。
仕事場に行けばたくさんの子供たちが自分を慕
っ
てくれる。
自分に子供がいなくても少しも寂しくなか
っ
た。
みんなかわいい。
むしろいないからこそ他人の子供でも
本当の子のようにかわいいのだと思
っ
ていた。
そして天職だと思
っ
ていたという。
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