第18回 てきすとぽい杯
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待ち合わせ
muomuo
投稿時刻 : 2014.06.14 23:42
字数 : 1219
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待ち合わせ
muomuo


みらいが降てくる。
きらきらと。綿菓子みたい。

あの人にまた会いたくて、今日も内緒で森に分け入た。
正確にいえば、あの人の想いを浴びるため。
姿形までは見えないし、降てもこない。
ただ想いと、言葉の断片だけが降てくる。

優しい想い。それでも凛とした男性の声。
田舎くさい男子とか足元にもおよばないし。
一方通行だから、私のことだて知らないはずだけど、私は彼に恋をした。


16年後、地球は壊滅する。
原因は誰にも分からないみたい。でも、とにかく異常気象で滅ぶ。
劇症型の発作のようだたというから、まさに天変地異だ。
地下やホラ穴に隠れ住むような毎日で、彼もただ死を待ているだけ。
だからせめて、過去の私たちに届けばと念じ、祈ているのだという。

それは真実だ。想いで嘘はつけないから。見た目も先入観もない。
ただあまりに突飛すぎて、普通はとても信じてもらえるように思えない。
実際のところ、他の人が聞いてもどうにもならないだろうと私はあきらめていた。

それに、信じたとしても何も改められはしないと思う。
周りの男子なんてスカスカ。できもしない、背伸びばかりでウソばか。
何より、誰かを思いやるなんて想像もつかない連中だ。
親とか先生とかだて、せいぜい明日のことで精一杯なんだろうし。

だから私は、ただ声を、想いを反芻する。
……会いたい。草に触れるとちくちくする。
ごまかすように足早になる。……ん? 逆かな。


ん、声……
少し斜面が急になり、手近な枝をつかんで立ち止またときだた。
逆に自分が、大地の力に支えられたような気がして、ふと疑問が浮かんできた。
辺りに、夕立の前の土の匂いが立ちこめてきたような気もする。
もしかして、あれは地球そのものの声……たのだろうか?

だとすると、恋もなにも……
……でも彼、隠れ住む毎日……
……いや、はきり言てはいなかたかも。
と脱力してしまい、歩くのも遅くなてきたけれど。
しばらくして、待ち合わせの場所に到着。

……彼の声がする。
まだ木洩れ日の残る時間帯、ここは別世界とつながるのだ。確かに。

でも、私はかなり真剣に悩みはじめた。
優しい声。やぱり素敵な想い、だけど……
地球の声は、男性なのだろうか。
いやその前に……日本語だたけど……

「アマチア無線の、受信機……?」

なんてヒラメキダ。見たことはないけれど、それが答えと悟てしまた。
理由も正体も探る気はないけれど、それはあるに違いなかた。
地球はきと滅びない。彼は嘘をついていた。
なくしてもないものを見つけて、探し物をなくしてしまたんだろうか。

もう一度、耳を澄ませた。

……けれど私は、夢から醒めただけ。恋が冷めたわけじない。
彼の嘘は心地いい。詩でも小説でも紡ぐよう。
こんなふうに聞かせる相手がいるなんて思てもなかたんだから、誰を騙すつもりでもない。
私が勝手に、酔いしれただけ……
だから今でも、待ち合わせは続いてる。私は文学少女になた。


                         <了>
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