てきすとぽい
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スーパーショートなラノベコンテスト #スシラノコン
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給食当番
(
茶屋
)
投稿時刻 : 2014.07.14 23:38
字数 : 1842
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給食当番
茶屋
僕は給食を運ぶ。
それが僕の役割だから。
考えることは止めてしま
っ
た。幾度か繰り返されたこの役割に慣れてしまうことに甘んじた。
僕はただ給食を運べばいい。
それだけのことだ。
僕は、給食当番なんだから。
「ぱんぱかぱー
ん。本日より、あなたは給食当番です。おめでとうございます」
携帯電話の甲高い着信音で目を覚ましてみると、奇妙な文面が画面の中に浮かんでいた。
給食当番?
一体何のことだろう。
確かに中学校までは給食だ
っ
たし当番にもな
っ
たことがあるけれど、高校には給食なんて無いしいつもは弁当を食べている。
何かの間違いか?それともスパムメー
ル?
そんな考えを弄びながら学校へ行く準備をする。
「行
っ
てきます」
出かける頃にはもうそんなことも忘れかけていたのだけれど、玄関の前には黒服の男が二人立
っ
ていた。
「迎えに来た」
彼らは僕にそう告げた。
神がいる。
供物を捧げなければならない。
神に食を給する。
それが給食当番の役割だ。
僕たちは外区にいる神に食を運んでいく。そのための部隊に僕は所属している。
他の都市の蛮族から給食を守るため、装甲に身を包み、銃を手にし、心を殺す。
初めて都市を囲む「壁」を目にした時、僕は愕然とした。
初めて「壁」を越え、外区を目にした時、僕は呆然とした。
僕の信じていた世界が崩れ去
っ
た。
僕達があると信じていた世界は存在しなか
っ
た。
視覚的にも意識的にも不可視化された「壁」に囲まれた都市は、僕の信じた世界と地続きなんかじ
ゃ
なか
っ
た。
外区はまるで核戦争後の世界みたいに荒涼としていて、見たこともない植物や動物たちのいる世界だ
っ
た。
神は都市を維持するために必要な装置だ。
だから生贄を捧げ、宥め無くてはならない。
どういう原理かは分からないが、神によ
っ
て食料や資源、エネルギー
が賄われているらしい。
神とは一体何物なのか。
宇宙から飛来したとも、人間が生まれる以前からこの惑星に存在したとも言われている。
ただ、神とそれは呼ばれている。
人智を超えた存在だから、そう呼ばれている。
何故、僕らが選ばれたのか。
答えは意外というか古めかしいような気がするもので、神に生贄を捧げるものは不浄であ
っ
てはならないという理由だ
っ
た。
そのため、15歳から20歳の純潔の人間を無作為に選び出したというわけだ
っ
た。
僕らに特殊な資格や能力があ
っ
たわけじ
ゃ
ない。
ただ、汚れていなか
っ
ただけだ。
その日僕らは「SU09」と呼ばれる神に給食を運搬する任務についた。
ヘリで外区へ行き、ヘリの近づけない領域から給食の運搬を行い、捧げ、儀式を終え、帰還する。
それだけのはずだ
っ
た。
だが、ヘリが蛮族のロケ
ッ
トランチ
ャ
ー
により撃ち落とされ、予定の降下ポイント大きく外れた。
改めて策定したルー
トに従い神殿に向か
っ
たが、その途中、蛮族の襲撃を受けることとな
っ
た。
蛮族の旧式の銃に油断したのが間違いだ
っ
た。
仲間の首が飛んだ時、僕らは間違いに気づいた。
山刀を持
っ
た狂戦士だ。神の欠片を体内に埋め込んだ、蛮族の精鋭。
驚異的な身体能力と回復能力をも
っ
た、仮面をつけた化け物。
仲間が次々と倒れていく。それでもかろうじて給食の箱を守り抜く。
殿は僕だ
っ
た。
仲間が倒れる。
銃弾が尽きる。
意識が途切れる。
「起きたか」
助か
っ
たのかと思い目を開いてみれば見たことない場所に寝かされていた。
周囲に居るのは、蛮族だ。
蛮族に連れ去られたのか。
「貴様らは我らの神を奪
っ
た。貴様らのせいで我らは衰退した。多くのものが死んだ」
横にいた少女が怒りを浮かべながら口を開く。
「だから奪い返す。あれは我らの神だ」
奪
っ
た?
神を?
「知らなか
っ
たようだな。だが、無知は罪だ。安穏としてきた貴様は、多くの罪を背負
っ
ている。多くの屍の上で、貴様は生きてきたんだ」
だが、あれは都市を維持するために必要なものだ。
僕らの生活を守るために必要なものだ。
僕らは、僕らを守るために
……
。
たとえ、他の民を犠牲にしてでも
……
。
わからない。
僕はただ言われたままに、ただそれが生きていくためのルー
ルだと思
っ
て。
「選べ。死か、贖罪のために我々と共に戦うか」
そうい
っ
て少女は一つの欠片を差し出す。
神の欠片だ。
そうか、こうや
っ
て蛮族は狂戦士を作
っ
てきたのだ。敵を捕え、神の欠片を呑み込ませ、狂戦士を作り、自分たちのために戦わせる。
けれども、それは、今までと変わりがないかもしれない。結局のところ僕らは給食当番という都市の狂戦士だ
っ
たのかもしれない。
結局僕らは戦いに駆り出される。
結局僕らは消費される。
僕はその欠片を手に取り、そして
――
。
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