てきすとぽい
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スーパーショートなラノベコンテスト #スシラノコン
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食事の用意を担当している人ないし人以外へ
(
あなたの日記帳
)
投稿時刻 : 2014.07.30 20:42
字数 : 6566
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食事の用意を担当している人ないし人以外へ
あなたの日記帳
「Who
done
it?」という問いがまたしても飛び出してしま
っ
たまさにその時、僕は食堂に一人残
っ
て飯を食
っ
ていた。まあ、主観的には。
梶原はどすどす床を踏み鳴らした後にスキ
ッ
プしながら入
っ
てきた。この食堂という名前がとりあえずついている場所では、そうや
っ
て床に繁茂している真
っ
黒な草というか藻というかを追い散らさないと歩けたもんじ
ゃ
ない。踏むと刺すので虫の一種かもしれない。虫は光合成しないものだという常識があるとして、ここでは通用していない。まあ、今のところは。
にしても最悪のタイミングという奴だ。間抜けだともいう。僕はわざわざ梶原の頭を開け、中に入
っ
ている辞書を引いて調べた。間抜けとは脳の代わりに辞書が入
っ
ている梶原のような奴をさすが、その語源は別に脳がないけど辞書があるという解剖学的特徴とはあんまり関係がなくて、「間が抜けている」から来ているそうな。やらなくてもいい時にやらなくてもいいことをや
っ
てのける。
それでその時の梶原の間抜けぶりと言
っ
たら、ち
ょ
うどカレー
を食べているときにうんこの話をするようなものだ
っ
た。不幸な僕の魂を慰めるために補足すると、僕はその時カレー
を食べていた。まあ、主観的には。
「who?」じ
ゃ
なくてwhatじ
ゃ
ないかなという僕の反論を梶原は無視する。辞書を大事そうに頭の中にしまい込んでいる梶原の代わりに省略を止めるとこういうことだ。
「何が俺たちに食い物をよこしてんだ?」
食い物以外かもしれないよ、とは指摘しない。何しろ僕は今食べている。
僕の人生から条理と常識が手に手を取
っ
て逃げ出してしま
っ
たときのことはよく覚えている。これは別に、ち
ょ
っ
と厨二病にかか
っ
た人間(や、現状の僕ら)がよく陥
っ
ている「なんでもこ
っ
た比喩をひねらずにはいない症候群」じ
ゃ
なくて現実の光景だ。何しろ目撃者がいる。僕がこの〈学園〉に隔離された時のことだ。通用門ということにな
っ
ているあのぐに
ゃ
ぐに
ゃ
に僕たちが恐る恐る足を突
っ
込んだ時ち
ょ
うど横にいた梶原の証言では、確かに僕の頭からなにか光り輝く二つのものが飛び出して明後日の方向に
――
梶原が誓
っ
て言うところでは「俺が小学三年生の時にか
っ
とばした満塁ホー
ムランみたいに」
――
す
っ
飛んで行
っ
たそうな。
なんじ
ゃ
そり
ゃ
と思
っ
た僕は一緒に入
っ
たほかの二人であるところの正木と円藤を問い詰め、正木のほうからは「そういわれてみたらそんなものが出てた気がする」という証言を引き出した。一方円藤のほうは僕がこの話を切り出すや否や言葉を濁し、そのせいでち
ょ
っ
とした緊張関係が樹立された。円藤いかにも言いにくそうに曰く「俺は別に光なんか見なか
っ
た」。
もちろん今では別にこの手の不整合なんて僕らはみな鼻で笑い飛ばす。でも、当時は僕はまだ〈学園〉に来ていなくて、つまりはこの世の皮を一枚はがせばそこには道理とか理屈が通
っ
ていると信じていたのだ。僕らはいかにも若か
っ
た。「バカだ
っ
たよねダハハ、ダ
ッ
ハ
ッ
ハ
ッ
ハ、ハが
ッ
」とは正木の弁。黙れよほんとにと僕は思う。僕らがここ一年ぐらいで目にしている唯一の人類の生きている女だということをさ
っ
ぴいても、正木はなかなかの美人なのだ。黙
っ
てさえいれば。
さて、円藤はなんで黙
っ
ていたのかといえば、その時は僕らがまだあまり仲良くな
っ
ていなか
っ
たという理由に尽きるものであるらしい。調子を合わせておかないと何されるかわか
っ
たもんじ
ゃ
ないと思
っ
たそうで、まあそれは無理もないかなと思う。あの時の僕は荒れていたし、〈学園〉に入
っ
てからはどう見えていたか知る由もない。
見えると言
っ
たら、目を覚ましたら紙コ
ッ
プにな
っ
ていた朝のことは今でも忘れられない。うろたえ騒いだ僕は寝床を飛び出し、梶原や正木や円藤を探して〈学園〉じ
ゅ
うを
――
安全じ
ゃ
ないかなあと思われる範囲を
――
彷徨
っ
た。見つか
っ
た三人はそろ
っ
て視聴覚室でうどんなんかすす
っ
ていて、これ自体驚くべき発見だ
っ
た。視聴覚室に見える空間が実在していたこともだし、折れ曲が
っ
た懐中電灯みたいな物体からうどんが出てきたこともそうだし、なにより三人はあろうことか椅子に座
っ
ていた。この〈学園〉に座れる椅子があるとして、大体はほかの誰かが座
っ
ている。何かが座
っ
ていることもある。座
っ
ている誰かないし何かは、特にやさしい場合には目に見える。触れないことは多い。電磁波や放射線や微細振動を発していることもあ
っ
てこういうのに当たると死ぬ。まあ、一時的には。
その時の三人は別に死んでいなか
っ
た。恐る恐る近づいた僕は自分の分と思しき椅子に座り、すると正木が顔も上げずに曰く「おはよー
」。残り二人ももごもごとごあいさつで、僕が紙コ
ッ
プにな
っ
てしま
っ
ていることは一顧だにしなか
っ
た。事情を説明しても三人少しも慌てず騒がず「今気づいたの?」との由。なんでもおとといあたりから僕は紙コ
ッ
プにな
っ
ていたのだそうな。マジかよ、と嘆いた僕に微笑みかける正木の顔立ちはそれはもう可愛くて、僕は危うく恋に落ちるところだ
っ
たし、「僕にお出汁を入れて飲んでよ」なんて一世一代のプロポー
ズも飛び出しそうにな
っ
たけれど、それは正木がすす
っ
ていたうどんが急に針金に変わ
っ
たおかげで未然に防がれ事なきを得た。針金を噛み砕く女性の笑顔には千年の恋も一発で覚ます威力がある。
その時の僕は破れた恋を床に投げ捨ててその場を乗り切
っ
た。自分が紙コ
ッ
プであるという問題のほうは、何か得体の知れないゲル状物体が円藤の声で「今日は掃除休んでもいいかな、体調悪くて」と切り出してきたときに消え去
っ
た。そういえばこいつは円藤だ
っ
た。二週間ぐらいこの格好なものだから忘れていた。まあ細かいことを気にしてもし
ょ
うがない。何しろここは〈学園〉だ。
さて横道を逆走して、僕らがこの〈学園〉に入
っ
た時に円藤が何を見たのかという話に戻ると、円藤はごぼうをみたんだそうである。例の食べられる木の根
っ
こみたいな代物だ。そいつが僕の頭に突き刺さり、頭蓋骨を砕き、脳漿を飛び散らせる様を円藤は確かに見たという。頭の砕け散
っ
た僕はそのまま通用口に入り、しばらくはそのまま生活していたんだとか。ああだからあんなビビ
っ
てたのかあと納得すると円藤は笑う。「だ
っ
てごぼうだよ。しばらくは頭もなか
っ
たし」
-(条理+常識)+ごぼう=僕-頭部。つじつまは合う。平仄が合うともいう。頭を取り戻した僕のもとに条理や常識が戻
っ
てきたり、あるいはごぼうが出てい
っ
たりする気配はない。まあ主観的に。今のところは。
全員が集まるまでには一時間かかり、僕と梶原はその間に部屋の掃除と、安全な区域の点検をした。目立
っ
た発見といえば家庭科室(ということにな
っ
ている部屋)の中心部、天井のテー
ブルの間から金属質のオブジ
ェ
が生えていたぐらいのものだ
っ
た。棘が何本も突き出していて、それぞれの間には虹がかか
っ
ている。大きさは冷蔵庫ほど、これは時々廊下を走
っ
ていたりするアレのことではなくて、食品を冷やして保存するのに使う道具のこと。にいいいいいいという軋るような音は人間の可聴域の外で出ていると梶原はいい、僕は僕でオブジ
ェ
表面のアルベドが異様に高くて困惑しきり。棘にしがみついていた無数の蜘蛛状の生き物の一体に話しかけてみたところ「暇そうに見えるか!」とのお叱りを頂戴したのでひ
ょ
っ
とすると僕らと同じような生徒のなれの果てかもしれない。差し迫
っ
た危険ではないだろうという評価を下し、僕らはそ
っ
と家庭科室を封鎖する。オブジ
ェ
の名前は「針山」にする。
僕らの話を聞いて正木は高笑いし、円藤は死にそうな顔になる(今の円藤には顔がある)。おなじみの反応というのはとても貴重なもので、それは向こうも同じらしい。何もかもがち
ょ
っ
と目を離すと取り返しのつかないほど変わ
っ
てしまうこの〈学園〉で、僕らだけが変わらず、安全で、安心できるものなのだ。
「へー
、じ
ゃ
あ家庭科室あとで見に行
っ
てみようかな。ヤバい?」
「とりあえず無害そう」と梶原が頭をぱかぱかさせた。
「蜘蛛がいたよ」
「蜘蛛か―。サイズは? あたしの口に入る?」
「余裕で。あと人語をし
ゃ
べる」
「そ
っ
かー
」
「やめなよ、蜘蛛なんて食べるの」と円藤が恐れをなす。正木はえー
いいじ
ゃ
んおいしいかもよとカラカラ笑う。正木はここに来た当初から、とりあえずなんでも口に入れようとする態度を貫き続けている。正木が食べてないものとい
っ
たら床(ダイヤモンド並みに硬い)と天井(届かない)と僕たちぐらいのもので、それも最後の一つについては「僕らの意識がある間は」の但し書きが付く。僕らが寝ている間とか、僕らの分岐体とか、その他想像もつかない形で僕らが餌食にされている可能性は0ではない。まあ、僕の信じるところでは。どうせなら性的な意味で餌食になりたいと思
っ
たり思わなか
っ
たりしないでもないことを、僕は別に否定も肯定もしません。
話題が食べ物に及んだところで、梶原が当初の目的を思い出した。
「というわけで本日の議題は、俺たちに食い物を配達してくれているのは何か、です」
「神」と僕。
「床」と正木。
「う
っ
せー
よお前ら。円藤、お前はどうよ」
「んー
」と言
っ
たきり円藤は黙る。語りえないことについて円藤は沈黙する。語れよと言われても沈黙する。考えていないのかというとそんなことはなく、突然深い洞察が飛び出してくることも多々ある。悲しいことにここでは洞察なんか何の役にも立たない。朝に知られた道は夕べには死んでいる。可なり。不可だろ、と思
っ